急増する「児童虐待」、根因はどこにあるのか 日本は「子ども受難」の少子化社会だった
同協議会は官民が協力して、「社会的養護においては、養子縁組・里親委託をはじめとする家庭養護の提供を優先的に進めること」「実親への支援により、家族分離の予防・家族の再構築を促すこと」「その他広く困難な状況にある子どもへの支援や子どもの貧困対策を進めること」を目指す。ただし彼らが「国の宝」と謳う子どもに良好な環境を与えるためには、そのハードルも高くなる。そのひとつが実親の権利だ。

実親が親として適性を欠くために子どもを養子とする場合、特別養子制度であれば親子関係は切れる。しかし特別養子縁組を成立させる審判の申立ては養親が行うため、実親の同意がなければ実親から不当な攻撃や要求が後になって出てくる危険性があり、養親の心理的な負担は大きくなる。
そこで今年3月14日に公表された社会保障審議会児童部会新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会報告では、「実親との法的親子関係を解消させる手続き」と「養親との法的親子関係を生じさせる手続き」を分離し、前者の申立権を児童相談所所長に付与することで、養親のリスクを軽減させることを提案している。全国に先駆けて養子制度に積極的に取り組む福岡県福岡市では、こども総合相談センターに課長職の弁護士が常勤し、児童虐待の介入や保護に取り組んでいる。
ドイツで行われていること
もうひとつのハードルは、女性が秘匿で出産した場合、大きくなった子どもが自分の出自について知る権利だろう。これを調整したのがドイツで2013年に成立した「妊婦に対する支援の強化及び秘密出産の規制に関する法律」だ。
同法によれば、望まない妊娠をした女性が自分の名前を明らかにしたくない場合、匿名性を十分に保証された上で病院管理の下で出産することができる。検診も受けられる点で、母体を保護でき、胎児の安全も確保できる。女性は相談所で面接を受け、子どもとの生活を提案されるが、受け入れられない場合は母親の氏名を秘匿し て子どもは養子に出される。
それに対抗するのが、子どもの出自を知る権利だ。
子どもは16歳になると、連邦家族・市民社会問題庁で出自証明書を検閲することができるが、母親がその出自を知られたくない場合には、子どもが15歳になった日以降に相談所に説明し、閲覧を禁止することができる。もし子どもがこれに異議がある場合、家庭裁判所が調整する。なお出産に関する費用は連邦政府が負担する。
しかし、そもそもの原因を再考する必要があるだろう。子どもの虐待の多くは、貧困や格差社会が原因。その連鎖を断ち切ることこそ、政治の役割といえる。
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