トランプの「お手本」、実はベネズエラにいた

やり口は故チャベス大統領とうり二つだ

チャベスは選挙で選ばれた大統領に対するクーデターに1992年に失敗したにもかかわらず、堕落したエリートから支配をもぎ取り、人々に還元するとの公約を掲げて運動を続けた。

3月30日にウィスコンシン州で演説するトランプ氏(写真: ロイター/Jim Young)

トランプも同じく、アウトサイダーには好都合な時期に、億万長者のセレブとして米国政治の舞台に登場した。8年間にわたる不況を経て、人口の大部分が、景気回復の恩恵にあずかれず所得格差に苦しめられていることに依然として憤慨していた。失業の主因は中国人やメキシコ人、そして移民によるものだとするトランプの主張を、彼らは受け入れた。

チャベスが分かりやすいスケープゴートとして米国を名指ししたのとまったく同様に、トランプは選挙活動開始時の演説で政治家を非難した。「彼らが米国を再び良くすることはない。彼らはロビイスト、株主、さらには特定の利益によって、完全にコントロールされているのだ」と。

チャベスは2013年に死亡するまでの15年間、このポピュリスト戦略を活用して政権を保った。彼は闘争を通じて抜本的な変革を追求し、大統領としての自分に権力を集中させ、敵対する者を排除・抑圧した。

「救世主」にすがる代償

彼が残したものは、ばらばらになった与党と批判を強める野党の狭間で国家が直面している機能不全だ。石油に依存する経済システムも腐敗している。ハイパーインフレの弊害は甚大で、記録的に増加する殺人の問題は手付かずのままだ。

トランプはライバルを「敗者」や「バカ」だと嘲笑し、支持者にも同様に礼節や他人への尊敬を放棄するよう勧める。事実をでっち上げ、最高の指導者だと自称する彼は、政治のノウハウや、具体的な根拠に基づく政策決定を信じていない。

政治を担う人々が有権者との対話などを怠っていると認識されたときに、チャベスやトランプのようなアウトサイダーは力を持ち始める。一見救世主のようなこうした輩に有権者が無制限な政治的権力を与えてしまうと、利己的なリーダーの気まぐれに振り回されるという、権力集中のリスクを背負う羽目になるのだ。

著者のジェニファー・マッコイ氏は米ジョージア州立大学の特別教授で、分極的多党制に関する著作がある。このコラムは同氏個人の見解に基づいている。

 

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