「バスタ新宿」で新宿南口は何が変わったのか 39都府県を結ぶ「バスの玄関」の裏側

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人工地盤の2階はJRの改札と歩行者広場。バスターミナルやタクシー乗り場へはエスカレーターなどで直結している

だが、鉄道、バス会社ともに、「競合」は特に意識しておらず、むしろ「協調」による活性化への期待が高いようだ。JR東日本は「新宿の交通結節点としての機能が高まる。競合のあるなしよりも利便性の向上が重要」。バス会社も「新宿でバス同士の乗り換えもできるようになり、高速バスがこれまでの2地点間移動からネットワーク移動の手段になっていく」(高速バス大手、ウィラーアライアンスの村瀬茂高社長)と期待を示す。石井国交相も「これまでも(各交通機関は)共存してきたが、より共存がうまくいくのではないか」と、共存共栄の見方を示す。

「共存共栄」に向けた動きは、東京都の取り組みにも見られる。都は4月1日に新宿駅やその周辺の案内サイン類の表記やデザインなどを統一してわかりやすくする「新宿ターミナル基本ルール」を策定したと発表。現状では各社や場所によって異なっている案内サイン類を統一するほか、乗り換え動線のバリアフリー化などを進める。

高速バスのイメージ向上にも

国交省東京国道事務所はバスタ新宿の整備効果の一つとして、「割高」とされている国内移動の費用について、高速バスによって低コストな移動サービスの提供が可能になり、訪日外国人観光客のさらなる増加に向けた支援となることを挙げている。

これまでは駅周辺の狭いスペースや道端、駐車場など、どちらかといえば雑然としたスペースにあることが多かった高速バス乗り場。それが一つの近代的なターミナルに集約されたことで、利便性はもちろんのこと、高速バスという交通機関のイメージ向上にもつながるに違いない。

東京都心では今回の新宿以外にも、東京駅八重洲口の地下に大型のバスターミナルを整備する計画があるなど、全国各地を結ぶバスと鉄道の結節点整備が進む。新幹線網の拡大が注目を集める昨今だが、訪日外国人観光客の増加や2020年の東京五輪開催に向け、都心と各地をダイレクトに結ぶ高速バスの果たす役割がより高まっていきそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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