そんな中、2014年1月に出店したのが、六本木店だ。冒頭でも述べたように、ここでは店内のキッチンで握られる「おむすび」が大人気だという。手作りであることもポイントが高いと思うが、支持されるワケは、「素材一つひとつの良さでは」と製造部門責任者・取締役の田中和彦さんは説明する。
「お惣菜は有料試食」というのが、福島屋の考えだ。どういうことかというと、全店において惣菜は、店頭で販売しているこだわりの食品や調味料を使い、店内のキッチンで調理しているのだ。おむすびも例外ではなく、選び抜かれた素材で作られている。
具材の人気ナンバーワンは?
まずは、コメ。福島屋は、20年以上も前から東北の生産者から直接コメを仕入れているのだが、おむすびもこの提携農家のコメを使う。おむすびに向く粘度かつ旬のコメを日々採用しているという。海苔も有明産のオリジナル商品、塩はほんのり甘味のある内蒙古の「天外天塩」だ。
ナンバーワン人気の具材は、「山漬け鮭」。塩鮭を作るには、剣山のような針で鮭の身に塩水を注入する加工法「インジェクション」が一般的らしいが、ここでは「山漬け」という伝統技法で仕込んだ塩鮭を使っているという。秋鮭に大量の塩を施し、山のように積み上げ漬け込むことから「山漬け」と呼ばれるが、途中で上下を入れ替えるなど手間も時間もかかる技法なので、今は広く流通していない。
だが、その分、「一般流通の鮭と比べ水っぽさがなく、中辛口で熟成したうま味がある」と田中さんは話す。確かに、程よく締まった身の食感と塩辛さの中に広がる旨みがコメに合う。3歳の息子もこれがいちばん気に入ったらしく、夢中でペロリと一個たいらげてしまった。
2番目に人気の具材は、「梅干し」だ。使われているのは、和歌山県産の「樹上完熟 南高梅」というオリジナルの梅。青いうちに収穫し出荷される通常の梅に比べ、これは自然落下した完熟梅なので香りが高く柔らかい。酸味も強く塩のみで漬けているので酸っぱいが、この昔ながらのシンプルな味わいがたまらない。
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