ペットが持つ「癒やし効果」が絶大な理由 凶悪犯罪者さえも心を入れ替える
退役軍人病院では、犬だけでなくオウムも、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者の不安を和らげる働きがあったという。ブルックリンの退役軍人病院でペットセラピーを運営する心理学者のバレリー・エイベルは言う。「セラピー犬の効果は絶大だ。みんな『次はいつ来るんだ』と聞いてくる。大型犬が患者のベッドに頭を乗せて、お互いリラックスしている姿も見られる」。
殺人犯も暴力傾向が低下
セラピー犬と20分一緒に過ごしただけで、患者のストレスホルモンの値が低下し、幸せホルモンとも呼ばれるエンドルフィンの値が上昇する。認知症の高齢者は、セラピー動物と交流した後、うつのレベルが低下する。また、サザン・メイン大学の研究では、セラピー犬の訪問が、重い認知症患者の興奮を落ち着かせることもわかった。
また、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究では、セラピー犬と12分間交流した心疾患患者は不安レベルが大幅に低下し、心臓と肺の血圧も下がったという。
ペットセラピーは意外なところでも効果がある。あるプログラムでは、保護施設に引き取られ、「安楽死」を待っているだけの犬への訓練を、刑務所の受刑者に任せた。受刑者の中には殺人犯やレイプ犯もおり、多くが怒りをコントロールできないという問題を抱えていた。受刑者たちは犬を社会化し、人を信頼して行儀よく振る舞うようしつけ、簡単な命令を教えた。するとその過程で、受刑者たち自身の暴力傾向やうつ病の症状が低下した。彼らは思いやりを学び、目的意識を持ち、世話している犬から無償の愛を受けた。受刑者たちの訓練によって「リハビリ」を終えた犬たちは、多くの支援者に引き取られていった。カンザス州では、ランシング刑務所の「セーフ・ハーバー・プリズン・ドッグ・プログラム」で訓練を受けた犬1200頭が、ペットとして引き取られていったという。
わが家の犬もセラピー犬に、と思ったなら、まずはトレーニングの内容と費用を調べよう。トレーニングに参加するには条件が課されている場合もある。私の場合、マックスのワクチン接種と腸内寄生虫がないことを示す証明書(毎年更新が必要)を提出しなければならなかった。また、私自身が特定の感染症にかかっていないこと、エイズウイルスに感染していないことも証明する必要があった。病院では、私が薬物乱用者でないことも調べられた。
それでも、マックスと私が病院訪問から学んだことや経験は、こうした手続きの煩わしさを補ってあまりあるものだった。
(執筆:Jane E. Brody記者、翻訳:藤原朝子)
© 2016 New York Times News Service
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