新幹線開業初日、「変わる北海道」の姿を見た

「道民の悲願」達成も、将来像はまだ見えず

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観光客でごった返す函館駅前
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デビューした「はこだてライナー」を撮影する観光客

駅の喧噪を離れて5分ほど歩き、北海道新幹線開業と道南いさりび鉄道の誕生を祝う祝賀会場に着いた。鉄道・運輸機構のご厚意で、この祝福の場に招かれた。数百人の参加者の間をさまよい歩きながら、公私ともお世話になった、道内外の多くの知人友人と握手を交わすことができた。

皆、それなりに祭り気分を楽しみつつも「これからが正念場だ」「課題は山ほどある」と手短に覚悟や見立てを語りかけてきた。

高橋はるみ北海道知事や三村申吾青森県知事、JR北海道の島田修社長らはあいさつで、「青函トンネルと北海道新幹線は百年の大計」「青森や東北、本州がより身近になる」「新幹線を活用して経済圏や交流圏の確立を」と訴え、「札幌開通の早期実現を」と付け加えるのを忘れなかった。鏡割りの登壇者は60人を超え、このプロジェクトにどれだけの人と労力が費やされてきたかを考えさせられた。

乾杯から間もなく、時間の都合で会場を辞し、新函館北斗駅に向かった。函館駅の構内には、数日前まで津軽海峡線の主役だった789系「スーパー白鳥」の車両が並んでいた。次の活躍の機会はいつ、どこだろう。

北海道新幹線への接続列車として投入された「はこだてライナー」は、H5系に合わせたデザインが人気を呼び、多くの乗客がその姿をカメラに収めていた。ロングシートで3両編成の車両は、発車間際にはいっぱいになり、新函館北斗までの19分の時間は、浜松町から羽田空港までのモノレールを思い起こさせた。

乗り換え時の一瞬、改札を出て新函館北斗の駅舎を撮影した。テントが並び多くの人でにぎわう光景に、函館駅前、そして1年前の北陸新幹線開業時の光景が重なった。未利用地が懸案となっている駅前の区画整理地区では、ホテルなどから成る複合商業施設の建設が進んでいた。次に訪れる時には、景観が大きく変わっているに違いない。

問われる地元の知恵と国の姿勢

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函館駅構内にたたずむ789系などの列車

帰路、乗車した「はやぶさ26号」の車内では、北海道新幹線や青函トンネルの由来について、丁寧なアナウンスが行われた。新青森駅が近づき、線路が高架になっている区間で、陸奥湾と青空、そして雪を載せた八甲田連峰が、傾いた日差しに映えて、素晴らしいパノラマを見せているのに気がついた。見慣れたはずの光景に、新幹線は多くの場合、新たな視点や姿を付け加えてくる。

だが、新青森駅をすぎると、車内のアナウンスは「本日も東北新幹線をご利用いただき…」と、やや無機質な、いつもの内容に戻った。短い夢から覚めた気がした。

整備計画決定から43年、北海道新幹線はついに開業を迎えた。しかし、どの程度の需要が生まれ、どのように地域を変えていくのか、まだ必ずしも将来像は見えない。広域的な視野に立った地元の知恵と、国の姿勢が問われる。

開業に前後して、多くのメディアから何度となく「経済効果は?」「札幌延伸の必要性は?」「開業時期の乗車率24%は低すぎるのでは?」といった質問を向けられた。北陸新幹線や九州新幹線と対比させ、北海道新幹線を開業前から「負け組」と認定させたいのか…といぶかった経験もある。

その都度、丁寧に対話しながら、整備新幹線問題の恐ろしさを実感した。問いを発する者の哲学、世界観がこれほど問われるテーマはない。新函館北斗から東京までを乗り通した26日深夜、それをかみしめている。

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