北海道新幹線の車両は「荷物輸送」に使える! 水産物がトラック便より早く首都圏に届く

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今月26日に開業する北海道新幹線は産業振興にも役立つ

3月26日に開業する北海道新幹線(新青森—新函館北斗間)の効果として、北海道の産業振興に対する効果の期待が大きい。筆者は2006年から公立はこだて未来大学の長野章名誉教授氏らと共同で新幹線車両の一部を活用した荷物輸送システム実現の可能性を研究し、旅客による効果以外の経済効果として提案してきた。

首都圏向けの北海道水産物は航空便またはトラック便で輸送されている。航空機を利用するのは運賃負担力のある高額の水産品である。トラック便の場合は、青函フェリーと高速道路を経由して首都圏へ輸送されている。このようなトラック輸送は航空便よりも安価である反面、多くの時間を要し、さらに悪天候によるフェリーの遅延、欠航など定時性の問題を抱えている。

既存の新幹線の1両を貨物用に

トラック輸送の場合、特に北海道道南地域の郡部から出荷した水産物が首都圏でせりにかけられるのは、漁獲した日から起算して翌々日となる。そのことは商品の鮮度面、価格面での競争力低下の要因にもなっている。

このため、生産地から消費地まで、可能な限り短時間の輸送もしくは首都圏の購入者にとって利便性のある時間帯に水産物が到着する輸送システムの構築が実現すれば、道南産水産物の高価値化、高質化が期待できる。

筆者らが提案してきた新幹線による荷物輸送システムの概要は次のとおりである。道南地域の沿岸の生産地から出荷される水産物が多く集まる函館魚市場を出発点とし、発泡スチロールなど移動式ボックスに収まる荷姿に梱包・出荷した水産物をトラックで新幹線駅に運び、専用エレベーターでホームへ移し、移動式ボックスごと車内に積載する。毎日、東京行きの始発便と最終便の2便について、車両1両を荷物輸送用に改造したものに替え、年間約6000トンの水産物を輸送できると想定した。

かつて京阪電鉄などの私鉄や国鉄は、地方港に水揚げされた水産物を都市に輸送するため貨物列車を運行していた。また、1935年に建設された築地市場では、鉄道が市場内に引き込まれ、汐留駅から市場まで貨物列車が運行されていたが、次第にトラック輸送に転換され列車輸送の需要は減り、1984年に完全廃止となった。現在、水産物を輸送する列車は、「伊勢志摩魚行商組合連合会」の貸切車両として1963年から運行を開始した近畿日本鉄道の「鮮魚列車」のみである。

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