北海道新幹線の車両は「荷物輸送」に使える! 水産物がトラック便より早く首都圏に届く

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提案した新たな荷物輸送システムを活用すると、どの程度、道南地域の水産物の付加価値増加に寄与し、それが道南地域に経済波及効果を創出するのか。筆者らは、関係者へのヒアリングやアンケート調査に基づく新たな水産物輸送のシナリオを作成し、効果の推計を行った。

仕向け先を市場向け(せり)、市場向け(相対取引)、小売向けの3つとし、ヒアリングは水産物流通有識者、築地荷受会社、小売業者、北海道のアンテナショップ、築地仲卸等に行った。ここで、相対取引とはせりをせず、荷受業者と小売業者の間で価格交渉をして販売する方法である。

ヒアリングの結果、小売店からの緊急・追加注文、日中の小口注文等への対応に新幹線輸送がこの荷物輸送システムに適応する可能性があり、輸送したい水産物の種類については当日売りの朝イカ、高付加価値商品、活魚、高品質高鮮度もの等は積載される可能性があることがわかった。

活貝類の価格上昇は2.5倍に

一方、課題もあった。輸送価格の設定(本研究では600円/10㎏)、新幹線駅から市場や店舗等への輸送の仕組み、漁港での迅速な処理(水揚げから箱詰めなど鮮度保持のための作業)、新幹線の運行時間と市場や店舗の開始時間のずれ、復荷の確保など指摘を受けた。

函館市沿岸部の漁業関係者、函館市の水産流通関係者を対象にアンケート調査を実施した。輸送したいとされた品目は、イカ、ウニ、コンブ、ホタテ、サケ、ヒラメなどが上位に挙がり、仕向け先別の荷姿別各品目の期待される価格向上率を聞いたところ、たとえば生鮮イカは市場向け(せり)が172%、市場向け(相対取引)が176%、小売向けが170%であった。他にも活貝魚、生鮮魚、冷凍魚、加工品別に期待される価格向上率は、品目によって異なるが、最も高い活貝類は平均が139%、最大値は250%と、水産物輸送への期待が感じられた。

また、水産物以外ではトウモロコシ、トマト、切り花、トマト、知内産ニラ、ジャガイモ、グリーンアスパラなどが挙げられ、特に知内産ニラ、朝もぎトウモロコシ、男爵イモは期待する価格向上率も高かった。

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