新幹線開業初日、「変わる北海道」の姿を見た 「道民の悲願」達成も、将来像はまだ見えず
3月26日、北海道新幹線・新青森-新函館北斗間(148.8km)が開業した。新幹線ネットワークが津軽海峡を越え、九州南端から北海道までが鉄路でつながった。現地では「道民の悲願が実現した」「早く札幌延伸を」と喜びの声が上がり、道南の新函館北斗駅や木古内は旅行者と住民でごった返していた。
もちろん、時間短縮効果が小さい、運行本数が少ない、駅前の開発が進まない、事前の予約も低調…と、多くの課題を抱えた中での開業であり、真価が問われるのはこれからだ。開業当日、道南を駆け足で回りながら、あらためて現状と課題を考えた。
3月26日午前6時32分、青函トンネルをくぐる一番列車「はやて91号」が新青森駅を発車した。未明に積もった雪を、朝日が雲間から照らす中、筆者は地元ラジオ局の生中継に立ち合った。記念式典の様子を遠巻きに眺めながら、しばし感慨にふけった。2002年12月の東北新幹線・八戸開業、2010年12月の新青森開業も、ホームで取材した。式典はともに東京へ向かう上り列車に合わせての実施だった。
出発式は「北への一番列車」で
しかし、今回は「北へ向かう列車」に合わせての式典となり、JR東日本の清野智取締役会長らが下り列車の出発を見送った。本州北端で、交通地図が塗り変わる瞬間を目撃した思いだった。ただ、「はやて91号」の車両は東北新幹線で使用されてきた「E5系」で、車体を横切るラインはピンク色だった。
午前7時41分、北海道側からの一番列車「はやぶさ10号」がホームに滑り込んできた。乗客の一部は、新青森で下車し、住民や観光関係者、自治体職員らの歓待を受けた。この列車はJR北海道が投入した「H5系」4編成のうちの一つで、ラベンダー色のラインが車体を彩っていた。いわば「名実ともに本物の北海道新幹線」だ。
1分後、「はやぶさ10号」は「青森ねぶた」の囃子のメロディーに送られて、ざわめくホームを後にした。
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