政投銀が鬼怒川ゴムにTOBを仕掛ける狙い グローバルサプライヤーへの変身なるか
この案件を担当するDBJ企業投資部の礒崎隆郎担当部長(崎の字は正しくは「大」の部分が「立」)は「今回の案件は同社の競争力をさらに強めること。真のグローバルサプライヤーになるという、そのポジショニングを盤石にするためのもの」と話す。
焦点は欧州進出だ。鬼怒川ゴムの関山定男社長もかねてから、「中欧を軸に進出を検討している」と話し、同社の課題だった。これまでアジアと米州では着実に拠点を築き、新興国ではBRICsの中国、ブラジル、ロシア、インドそれぞれ工場を設置していた。その一方で、欧州には工場をもっていなかった。
新興国シフトは足元では奏功しているとはいえず、ブラジルとロシアは業績の足を引っ張っている状況だ。好調が続いている中国事業にも減速懸念があるだけに、フォルクスワーゲンやルノーなど取引実績のある主要顧客の多い欧州進出は悲願だった。日系カーメーカーの工場進出も多く、この地域で一定のシェアを取らないことには、真のグローバルサプライヤーとはいえない。
欧州でのM&Aに意欲
鬼怒川ゴムは海外M&Aのノウハウを持っていないため、欧州でのM&Aについて、政投銀に期待している。ただ、買収相手は欧州が本拠の企業には限らないという。「欧州に拠点を持つ企業であれば対象になる」(前出の礒崎常務)。拠点自体の買収も考えられるし、もちろん一から工場を設立する案も消えていないが、需給を乱さないM&Aは有力な選択肢だ。
短期的には費用が先行し大きな業績悪化要因にもなりうる。株主によっては、ネガティブな印象をもちかねないし、株価の下落要因にもなりうる。そこで、いったん非上場化したうえで、3~5年という区切られた期間のなかで、成長のための思い切った投資を進めて、グローバルサプライヤーへの進化を遂げるという計画だ。
足元の取引先のラインナップをみれば、日産自動車、ホンダ、三菱自動車、富士重工、スズキ、そしてトヨタ自動車、マツダも加わって、海外事業に関して言えば、系列外取引が当たり前になっている。「品質がよいので、現地に出ている日系メーカーは選ばれやすい」と鬼怒川ゴム工業の高橋昭夫執行役員(高の字ははしご高)は話す。フォルクスワーゲン、ルノー、GM、フォードなど海外メーカーにも供給している。これを横展開できれば、グローバル化が進む。その意味では各拠点でつくれる製品の点数を上げていくことも重要だ。
グローバルサプライヤーへの変身を遂げ、5年後に鬼怒川ゴム工業は再上場を果たせるだろうか。
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