戦後第一世代にリーダーがいない自民党の“自縄自縛”

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戦後第一世代にリーダーがいない自民党の“自縄自縛”

塩田潮

 鳩山由紀夫・新首相は昭和22(1947)年の生まれである。戦後生まれの首相は安倍元首相(29年)に次いで2人目だが、団塊世代では初だ。鳩山内閣を見ると、菅副総理(21年)、千葉法相(23年)、川端文科相(20年)、赤松農水相(23年)、直嶋経産相(20年)、平野官房長官(24年)、仙谷行政刷新担当相(21年)と、全18人のうち、20~24年生まれが首相を含めて8人もいる。「戦後第一世代内閣」と呼んでもいい。

 「世代と政治」の話になると、故竹下元首相の言葉を思い出す。「自民党は世代的に途切れなくリーダーを輩出してきた」と言って、この手の話が好きな竹下氏は世代別の分布を詳細に説明した。まず明治生まれは池田(32年)、佐藤(34年)、福田赳夫(38年)、三木(40年)、大平(43年)、鈴木(44年)の各元首相がいた。
 大正世代は金丸信氏と後藤田正晴氏(3年)に、田中、中曽根(7年)、宮沢(8年)、宇野(11年)、竹下(13年)の各元首相らが続いた。
 一世代飛んで昭和10年代は人材の宝庫で、羽田(10年)、福田康夫(11年)、橋本、小渕、森の各元首相と河野洋平氏(12年)、細川元首相(13年)、加藤紘一氏(14年)、麻生前首相(15年)、小泉元首相と小沢一郎氏(17年)らがずらっと並ぶ。ところが、昭和ヒトケタは海部元首相(6年)、藤波孝生氏と石原慎太郎氏(7年)くらいしか、めぼしいリーダー候補が見当たらなかった。「そこが自民党の危機と思っていたら、案の定、野党に転落した」と竹下氏は分析を口にした。

 現在の自民党は、戦後第一世代のリーダー候補は谷垣禎一氏(20年)くらい。塩崎恭久(25年)、小池百合子(27年)、石破茂、石原伸晃(32年)の各氏はもう一つ下の世代だ。案の定、この人材難の隙を衝かれて、今度も野党に転落した。
 なぜこんな断層が生まれたか。自民党の没落の原因、さらに再生のカギは、もしかすると、こんなところにも潜んでいるのかもしれない。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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