市場に飽きられてきた「熊さん」たちの宴会芸 日本株を実体経済以下に下げるのは難しい

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これはあたかも、熊さんたちのパンツおろしという大道芸のようだ。ここでいう熊さんとは、日本株売りや円買いを行う投機筋などを指す。日本株の熊さんが、「はい、日本株が下がりました。リスク回避のための円高ということで、米ドル円相場も下がりましょうね」と言って、米ドル円相場の熊さんのパンツ(価格水準)をおろす。すると米ドル円相場の熊さんは、「米ドル安円高になったので、日本株は下がりましょうね」と言って日本株の熊さんのパンツをおろす。すると日本株の熊さんが…というように、繰り返しているわけだ。

このたとえは、大変くやしいことに自分で思いついたのではない。畏友から教えてもらったのだが、パンツをおろしていっても、地面より下にはパンツは下がらない。つまり、実体経済以下に下げることは難しい。また、熊さんたちは、別にボランティアでやっているわけではない。こうした芸が受けて(ほかの投資家が同調して日本株売りや円買いを進めて)、おひねりが飛んでくる(儲かる)からやっているわけだ。

しかし、実体経済以上にはパンツは下がらないし、米国市場における景況感は改善してイールドレシオの反転上昇は徐々に明確化している。これはむしろ、今後米ドル高が進むことを示唆している。

熊さんたちはいつまで芸を続けるのか

最近のドル安・円高のきっかけになったのは、連銀が今年はあと2回しか利上げしない可能性を示唆したことだと言われているが、もともと、もっと利上げすると考えていた向きがどのくらいいたというのだろうか。一時は「米国経済はリセッション入りする」「またゼロ金利に戻る」と騒いでいたくらいだ。利上げが2回程度に限られるという材料で、米金利が上がらないからと、米ドル売りを一段と進めるのは無理筋だ。

「日本株が下落したからリスク回避のための円高」という。欧米でなく日本中心に株価下落というリスクが台頭しているのだから、リスク回避のための日本売り、円安、というならわかるが、円高では逆だ。しかしこれまで、日本でリスクが発生しても、円買いが進むことは多々あった。

だからと言って、そうした使い古された、陳腐な円買い芸(宴会芸)では、観客(市場や投資家)から、ブーイングが早晩寄せられるだろう。実際、真偽のほどは不明だが、大旦那の日銀も、レートチェック(金融機関に為替の売買状況を尋ねて、過度の円買いをけん制する)という座布団を投げつけていると報じられている。そろそろ熊さんたちも、陳腐な芸は手じまい、パンツを上げ直して(日本株買い、円売りといった反対売買を行なって)、そそくさと退場するところではないだろうか。

今週(22日~25日)の相場だが、世界的には、売られ過ぎた株価が適正水準に回帰する動きが持続すると予想する。早晩日本株も、その輪に加わろう。ただし今週は大きな材料を欠く。そのため、まだ目先は、日本株安と円高の大道芸が居座る恐れがあるが、株価の深押しはなく、徐々に回復基調を強めよう。今週に限ると、底固めのままで終わってしまう可能性もあるが、円高が一巡すれば、他の要因が好転しているだけに、大きく株価が戻す展開も否定できない。このため今週の日経平均株価は、1万6500~1万7300円と、振れ幅の大きな推移を予想する。

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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