ソードアート・オンライン「VR実験」の舞台裏 仮想現実空間は、大きな可能性を秘めている

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実際に体感してみるとわかるが、仮想世界の中を歩き、目の前にある仮想の物体に触れていると、無味乾燥な文字によるユーザーインターフェイスに違和感を感じる。仮想現実という技術の中での活動をサポートするには、コグニティブ・コンビューティングで作られたAIのように、パターン化されない認知と解釈に基づく行動を取るサポート役は不可欠と言えるだろう。

買収したSoftLayerの技術を活用

また、もう少し技術的な領域に落とし込むならば、「今回のシステムを実現するために不可欠な技術を日本IBMが提供できるからだ」と彼らは話す。2013年にIBMが買収したSoftLayerの技術を用いた低遅延・広帯域のクラウドコンピューティング技術が、ネットワーク化されたマルチプレーヤー型の仮想現実ゲームを実現する鍵になっているからだ。

SoftLayerはグローバルに拡がるデータセンターを、インターネット回線だけでなく専用回線でも結んでいる。そのための追加料金は不要で、小さな遅延と保証された転送帯域の元にアプリケーションを構築できるのが特徴という。

複数台の3Dカメラで立体スキャンしたデータが、仮想現実の世界における自身のキャラクターとなる

ソードアート・オンライン ザ・ビギニングでは、プレーヤーを深度認識機能を備える3Dカメラを複数台用い、プレーヤーの身体全体を立体スキャン。その膨大なデータ量で実際のテクスチャも張り込むことで、一緒に戦う仲間の姿や動きを見ながらリアルタイムに協力プレイできるように設計されている。

とはいえ、自然に複数の参加者の動きを同期するには、瞬発力だけでなく安定したパフォーマンスが必要となる。それこそが、SoftLayerにとっての”見せ場”ということになるのだろう。

もちろん、今回のイベントはあくまでも「ソードアート・オンラインの原型を模した」コンテンツに過ぎない。このシステムの発展した先にソードアート・オンラインがあるわけではない。しかし、クラウドの発展とユーザーインターフェイス技術の拡張が続けば、いつかは小説の世界が実現するかもしれない。そのころには、”認知能力を有するコンピュータ”が、我々の生活の中に溶け込み、あらゆる行動のサポートをするパートナーとなっているかもしれない。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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