ポスト京都を担えるか、温暖化対策「鳩山構想」の影響度
「あらゆる政策を総動員して実現を目指す」。民主党の鳩山由紀夫代表は9月7日、2020年までの温室効果ガス削減の中期目標について「1990年比で25%削減」すると表明した。この数値はマニフェストでも掲げられており、温暖化防止への新政権の決意をあらためて示した格好だ。
新たな目標値は麻生太郎首相が表明した05年比15%減(90年比8%減)の方針と比べ、大きく踏み込んだ。麻生内閣での政府試算では、8%減だと国民負担は1世帯当たり年7万6000円、25%減だと36万円になる。数字の置き方で試算は変わるとの見方もあるが、産業界だけでなく家計においても、さらなる負担を前提とした数値といえる。
欧州からは歓迎の声が上がっている。12月に第15回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP15)が開かれるデンマークのヘデゴー気候・エネルギー担当相は「野心的な目標。他国も触発されてこの先例に倣うことを願う」との声明を発表。
一方、国内の産業界からは「(排出量削減のための)技術革新には時間がかかる。あと10年足らずでは難しい」(電力幹部)など、新政権の意気込みに対して戸惑いが広がっている。
25%削減は可能か
8%減と25%減とでは影響にどれだけの差があるのか。8%は国内での排出量の削減分である「真水」の数字。一方の民主党案では、鳩山代表は明言していないが、海外からの排出量取得など「真水以外」も含まれるとみられる。
京都議定書の目標値(08~12年で90年比平均6%減)に向けた現行計画では、排出量が増加した場合に備えて、森林吸収分で3.8%減、途上国の排出量取得等で1.6%減が見込まれている。さらに「産業界の国外からの排出量取得で3.9%減少する見通し」(日本総合研究所の三木優主任研究員)。合計すれば9.3%の真水以外の削減枠が想定される。
この真水以外の部分と麻生政権の8%とを民主党の目標値である25%から差し引くと、7.7%となる。これが実質的な上乗せ分といえる。前出の三木氏は「高い目標だが新たな排出量取引、環境税、技術革新などを取り入れて努力すべき」と指摘する。