中国減速、「人民元大幅切り下げ」という悪夢

全人代の経済政策説明で起きた3つの「異例」

3つめは、例年は明示されていた貿易総額(輸出入の合計)の目標数字が公表されなかったことである。昨年は6.0%増という目標を掲げていたが、実績は8.0%減という大幅なマイナスだった。輸入の減少には資源安の影響がかなりあり、原油など輸入量が増えているのに輸入額はマイナスという商品もある。外需の読みにくさなど、不確定要素が多すぎるという判断だろうか。

この3つは相互に関連しあっている。

20年までの第13次5カ年計画では、期間中の成長率は平均で6.5%以上と定められている。その下限を目標の範囲内に含めたのは、前年水準より大きく成長率を落としてでも経済の構造改革を優先するという姿勢の表れだろう。かりに経済の冷え込みが想定以上になった場合は、財政出動の拡大で底割れを防ぐ構えだ。

輸出を増やしたいのが本音

貿易総額についてはどうか。欧州や新興国の景気低迷で、外需の伸びは自然体では期待できない。3月8日に発表された1~2月の輸出額(米ドルベース)も17.8%減、輸入は16.8%減という大幅なマイナスとなった。しかし、中国は一方で、現代版シルクロード構想の「一帯一路」戦略を掲げている。ここには、陸の「新シルクロード経済帯」と「21世紀海上シルクロード」の沿線国を、中国が抱える過剰生産能力のはけ口とする狙いがある。輸出は増やしたいのが本音だ。

中国にとって、今年の最大の政策課題の一つが国有企業が抱える過剰生産能力の解消である。昨年秋以降、構造改革のビジョンとして示されたのが「供給側改革」だ。その眼目は、赤字が続いていて地方政府からの補助金で維持されている「ゾンビ企業」(ゾンビを意味する”殭屍”の広東語読みが”キョンシー”)を市場から退出させ、過剰生産能力を淘汰させることにある。  

リーマンショック後に行われた4兆元の景気対策により、中国では鉄鋼や石炭採掘といったインフラ関連の産業で設備投資競争が行われた。12年の習近平政権成立以来、その能力削減がテーマとなってきた。直近の3年で鉄鋼9000万トン、石炭2億トン、セメント2.3億トンの生産能力を削減してきたという。 

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