階級のない国の格差 増田英樹著
中国進出企業の悩みの種は労務と税務だろう。労務は地雷原、税務は恣意的かつ懲罰的。ともに国民性と共産党支配が深くかかわっている。「誰も知らない中国労働事情」のサブタイトルどおり、休火山のような中国労働事情はまだまだ理解されていない。労働者の不満が突如、爆発し、無関係な他工場へ伝播していく。大連進出企業を震撼させた山猫ストはいまだに語り草だが、ストの全貌から進出企業が頭を痛めている労働契約法の詳細な説明まで、産業界の第一線でこの問題に永年かかわった著者ならではの知見と体験が豊富につづられている。
特に工会を労働組合ととらえることは致命的間違いだとして、行政とのかかわりの中での労務政策のあり方にたっぷり言及していて参考になるし、安室憲一氏の解説も簡にして要を得ている。実務書というにとどまらず、中国人と中国文化についてのエピソード、解釈も豊富で、中国案内書としても楽しめる。(純)
教育評論社 1680円
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