「共同経済圏」がパレスチナ和平をもたらす

米NY流の特別行政区が解決のヒントに

イスラエルとパレスチナにおいても、同じような特別行政区を設けてはどうか。特別行政区では当初、イスラエル人とパレスチナ人の労働者がそれぞれ、自分が住む地域から通い、共同事業を営むことになる。しかし何年もすれば、徐々に事業運営の責任が増え、多くの人が特別行政区内に住み始めるだろう。

特別行政区に求められるのは高い自治権だ。そこには学校や医療施設などの社会インフラが不可欠だが、管理・運営は経済活性化と人種を超えたコミュニティ構築への意欲がある居住者に任せるべきだ。

モデルとなるのは、米ニューヨーク・ブロンクスにある同国最大の共同住宅「コープシティ」である。住人が共同で管理・運営し、警察機関なども自主運営している。米国ではこうしたCID(共通利害型住宅開発)と呼ばれる手法が広がっている。こうした試みをヒントに、中東でも異人種間の新たな連携の構築が望まれている。

すでにGDPの3割

イスラエルとパレスチナの特別行政区が仮に設置できれば、事業を起こす人材はすでに育っている。パレスチナのビジネスリーダーとイスラエルの富豪が12年に共同で設立した組織に「BTI」がある。そこには300人の会員がおり、事業の売り上げはすでにGDP(国内総生産)合計の約3割を占める。彼らなら特別行政区で最初の波を引き起こせる。

特別行政区では基本的な統治は居住者が行うが、外部のサポートがあってもよい。米国はエジプトとヨルダンで特別行政区を運営した経験があり、主導的な立場を担えるはずだ。米国以外の政府や他国の慈善家が補助金を出し合ってもよい。

当然、課題もある。一つが治安だ。当初は特別行政区の境界線に検問所を置く必要があるだろう。場所についても、少なくともイスラエルとパレスチナの宗教的な聖地や居留地、軍事施設から離す必要がある。

最初にできる特別行政区は、経済と政治が融合するモデルとならねばならない。イスラエル政府とパレスチナ自治政府がその点で連携できれば、失敗とされた「2国家構想」にもあらためて希望が見える。

週刊東洋経済3月19日号
 

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