アジアの鉄鋼業界 需要底割れ懸念は後退したが、引き続き競争圧力強い 《スタンダード&プアーズの業界展望》
韓国ポスコの業績は下期に回復へ
2009年上半期(2009年1~6月期)は、韓国の鉄鋼メーカーにとって厳しい事業環境が続いた。韓国鉄鋼協会(Korean Iron & Steel Association)は6月末時点で、韓国の上半期の国内鉄鋼需要を前年同期比35%減、粗鋼生産量を前年同期比23.3%減と見込んでいる。鋼材の輸出と輸入も、それぞれ9%減、49%減になると見込まれている。一方で、粗鋼生産量が今3月から前月比で増加傾向にあることから、需要は底を打ったとみられ、また在庫も正常な水準に戻っている。生産量が2008年の水準に戻るにはまだ時間がかかるとみられるものの、事業環境の厳しさは徐々に緩和されてくるとスタンダード&プアーズは考えている。
しかし、世界の鉄鋼メーカーのなかでもアウトルックが「ネガティブ」となっている先が多いなかで、韓国最大の鉄鋼メーカーであるポスコ(A/安定的/--)は「安定的」のアウトルックを維持している。同社は健全な財務構成と、国内での圧倒的な市場地位、強い価格交渉力、コスト競争力に支えられた強い営業基盤を持ち、これらが需要低迷に対する緩衝材の役割を果たしている。ポスコの2009年第1四半期(1~3月期)の稼働率は75%、第2四半期(4~6月期)は85%と、世界の競合他社に比較してもかなり高い。一方、5月の原材料価格の改定に先行して、製品価格が下落したことから、第2四半期の営業利益率は3.9%と、第1四半期の6.7%から悪化した。しかし、原材料価格の大幅下落と需要の緩やかな回復に支えられ、ポスコの2009年下半期(7~12月期)業績は、上半期に比べて改善するとスタンダード&プアーズはみている。
供給過剰問題抱える中国
中国の鉄鋼メーカーでも2008年秋以降、粗鋼生産量が低迷し、業績が落ち込んだ。しかし、公共投資や建設分野などの需要増を背景に、2008年末から粗鋼生産量は堅調に回復してきており、鋼材価格も上昇傾向にある。中国政府の景気刺激策が効力を発揮し始めたことの表れと、スタンダード&プアーズは考えている。中国財政部が増値税の還付率を引き上げるとともに、複数品種の鋼材で輸出関税を引き下げたことから、輸出意欲も高まっている。自動車販売台数の大幅な増加が示すように、製造業向け需要も回復しているものの、建設分野に比べるとまだ弱い。
鉄鉱石については、中国鋼鉄工業協会(Chinese Iron and Steel Association=CISA)と世界の大手鉱山会社との交渉が滞っている状態であるものの、スタンダード&プアーズでは原材料価格は全体として大幅に下がると予想している。一方、鉄鋼需要と製品価格は年初の非常に低い水準から回復しているため、宝鋼集団(A−/ネガティブ/--)を含む中国鉄鋼メーカーの収益性と財務内容は2009年下半期に改善してくるとスタンダード&プアーズは考えている。ただし2009年通年の収益性は2008年との比較では低くとどまるとみている。
一方、中国の鉄鋼業界は、短中期的な課題として供給過剰の問題を抱えている。中国政府は旧式設備の廃棄などにより能力削減を図るとしているものの、設備廃棄が急速に進むとは考えにくく、引き続き供給過剰状態が続くだろう。中国鋼鉄工業協会によれば、中国の粗鋼年産能力は6.6億トンと、2008年の粗鋼生産量の5億トンを大幅に上回っている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら