震災から5年、被災した鉄路の今とこれから 再開が見えた路線やBRT化…まだ続く模索

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竜田駅で発車を待つ、原ノ町行きの常磐線代行バス

しかし、住民帰還への助けともなるべく原ノ町側からの復旧工事は進んでおり、小高〜原ノ町間がこの春にも運転を再開する予定であるのは喜ばしい。現場を実見してみると、工事はほぼ完了に近づいているようで、試運転の開始も近いと思われる。

国土交通省の発表によると、その後は2017年春をメドに浪江〜小高間。同年中をメドに竜田〜富岡間の運転が再開される予定だ。残る富岡〜浪江間は、最近、発表があったばかりであるが、2020年春の営業運転再開が目標となる。

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移設の上、高架線として復旧工事が進む常磐線相馬〜浜吉田間

一方、相馬〜浜吉田間は、被災した町の中心部が移転することにより、一部区間を山側へ移設して復旧する。営業運転再開見込みは2016年12月だ。今のところ高架橋や駅はほぼ完成しているようで、架線も張られている。現在は、駅前広場の整備などが行われている状況だ。

いずれの区間にしろ、復旧した鉄道沿線に人口がどこまで戻ってくるかが、今後の鉄道復興へのカギとなるだろう。住民が利用してこその鉄道だが、原発産業が失われることが確実な竜田〜原ノ町間はどうなるか。相馬〜浜吉田間も、新市街地にどこまで人が定着するかだ。今後の復興の一助とするためにも、震災以前と同じように、東京と直結する列車の運転は望みたい。

大船渡線はBRTで本復旧へ

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気仙沼駅では、大船渡線(写真)、気仙沼線とも元の鉄道用ホームを改築した乗り場に発着

BRTとは「バス高速輸送システム」の頭文字を取った呼び名で、実はその定義は曖昧(あいまい)ではある。だが、気仙沼線(前谷地〜気仙沼間)、大船渡線(気仙沼〜盛間)は現在、そう呼ばれる交通機関が鉄道に代わる運行が再開されている。

ここでのBRTは、簡単に言えば鉄道敷地を転換したバス専用道を主に走る路線バスである。ただ、「バス」という呼び方は意識的に避けられているようで、あくまで「BRT」と称している。

このBRTは元来、鉄道再建までの「仮復旧」という位置づけであったが、2015年末にJR東日本が提示したBRTによる「本復旧」案を沿線自治体が相次いで受け入れ、恒久的に現状が維持されることになった。大船渡線に関しては、鉄道での復旧は行わないことに決まった。

人口減少が続く沿線におけるBRTのメリットは、運行本数を鉄道より多くできることや、運行コストが安いことだ。BRTから鉄道への再転換工事を行わなくて済むことなども、JR東日本案受け入れの理由と思われる。鉄道好きの落胆は大きいところだが、復興事業に追われる地元自治体にとっては、少しでも軽い負担で公共交通機関が維持できるのなら、十分ありうる選択肢であったのだろう。

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