三陸鉄道は「震災から5年」でどう変わったか 「あまちゃん」ブームに沸いた、あの路線の今
地元住民と観光客の割合はおよそ6対4ということになる。個人乗車券を買う観光客も一定程度いることを考えると、地元住民と観光客の割合は1対1に近づいているかもしれない。
観光客の増加は、あまちゃん効果だけによるものではない。三陸鉄道も地域と連携し、お座敷車両やレトロ車両を活用したさまざまなイベント列車を運行してきた。中でも、「なまはげ」のようなキャラクター「なもみ」が乗車する冬場の「こたつ列車」は大人気だ。また3月19日には、NHK BSで放映中のドラマと連携して「合コン列車」を運行させる。
こうした列車の中には、クウェート政府の支援によって新たに製造された車両もある。赤字に苦しみ、老朽化した車両を使い続ける、ほかのローカル鉄道からすればうらやましい限りだが、真新しい列車も観光客へのアピール材料になっていそうだ。
地元住民の利用は減少の一途
被災地を走る三陸鉄道ならではの試みもある。その1つが「震災学習列車」。列車で移動しながら、三陸鉄道の社員や沿線住民が車内で震災の状況を説明するというものだ。通常は団体列車だが、3月11日には個人向けに震災学習列車を走らせる。「初年度の参加人数は6000人。現在は年1万人の参加者がいる」(三陸鉄道の望月正彦社長)。
列車に乗車して説明を受ける震災学習列車に対し、オーダーメイド型の「三陸被災地フロントライン研修」というものもある。こちらは同社社員が事前に希望者から知りたい情報を聞き、視察コースを組み立て、全行程を案内し被災状況を説明するという内容だ。
初年度は3000人、2012年度は3800人に増えた。今年度も1000人以上の参加者がいるという。「こうした沿線外のお客様と地元住民の両方で利用者を増やしていきたい」と望月社長は意気込む。
では、地元住民の利用動向はどのような状況なのか。震災による沿線人口減少の影響もあり、三陸鉄道の乗車人員は2009年度の89万人から2014年度は69万人と、20万人も減ってしまった。この数字は観光客も含んでいるので、地元住民の利用者はさらに減っていることになる。とりわけ、高校生を中心とした定期券利用者の減少が目立つ。
三陸鉄道も鉄道事業者として打てる手立ては講じている。高齢者にも利用しやすいよう、5駅でバリアフリー化を進めている。運行本数を増やしたり、JR線との接続が容易になるようなダイヤ改正を実施し、新駅設置も計画している。だが、「線路が復旧しても、駅周辺の集落が流されてしまった地区もある。住民が戻ってくる状態になるまでには、時間がかかる」(望月社長)。
こうなってくると、やはり域外からの利用者を呼び込むしかない。だが2015年度は、前年度の全線運行再開によって観光客が増えた反動で、鉄道営業収益が大きく落ち込んでいる。あまちゃん効果も息切れしてしまったかもしれない。
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