ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ 影の支配者たちがアジアを狙う 宋鴻兵著/橋本碩也監訳、河本佳世訳 ~世界の金融史を「陰謀理論」によって説明
評者 奥村 宏 会社学研究家
不況になると陰謀理論(コンスピラシー・セオリー)が流行する。中国で150万部売れ、台湾や韓国でもベストセラーになっているというこの本もまたそれである。
簡単にいえばロスチャイルドをはじめとする金融財閥が世界を支配している、という内容だが、しかし個々の分析はなかなか手がこんでいる。
リンカーンをはじめアメリカの大統領のうち7人が暗殺されたが、その裏にはこれらの金融財閥がいた。そしてケネディ暗殺もまた同様だという。金本位制を放棄したのも、その裏にはロスチャイルドなどがおり、それによってインフレを起こさせた後、大不況にし、そこで金融財閥が安く買って儲ける。石油危機もアジア危機も、そして日本のバブル崩壊も同じように陰謀によって起こされたという。
アメリカの有名な歴史家であるR・ホフスタッターは『改革の時代』(邦訳『アメリカ現代史』)の中で、歴史はすべて陰謀によって動いている、というのは誤っている。しかし歴史において陰謀がなかったというのも間違っている。大事なことは、歴史において陰謀をいかに位置づけるかだ、と書いているが、その点からいってもこの本を荒唐無稽な陰謀理論だと片付けるわけにはいかない。
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