8割が症状改善!花粉症の根治に「新たな道」 ダニにも保険適用の「舌下免疫療法」とは?

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テレビニュースで舌下免疫療法を知った女性は、千葉大学医学部附属病院耳鼻咽喉・頭頸部外科の舌下免疫専門外来を受診。ひととおりの問診と検査を受け、シダトレンを処方された。最初は2週間に1回、今は月1回のペースで通院している。

「毎朝、起きてすぐシダトレンを舌下にたらすことを習慣にしました。そのまま2分後に飲み込み、5分間はうがいも食事もできませんが、じきに慣れました。シダトレンは冷蔵庫で保管するため、旅行に行った先ではホテルの冷蔵庫に入れました」

千葉大では、これまで約60人の患者にシダトレンによる舌下免疫療法を実施してきた。教授の岡本美孝医師によると、

「重症者だけでなく、軽症者も少なくありません。12歳以上に適用なので、受験を控えた中学生も。妊娠中は花粉症の症状が悪くなりやすく、あまり薬も使えないため、その前に治そうという若い女性もいました」

15年の花粉症シーズン終了後、千葉大と関連施設でアンケートをした結果、患者の約8割で症状の改善が自覚された。鳥居薬品の調査では、治療を1年間継続できた人が9割にのぼる。

「周りの花粉症の人たちに舌下免疫療法のことを話しても、『毎日の投与はいや』『通院も面倒』と言われました。でも、私はやってよかった。今年はゴーグルもマスクもいらないかもしれません」(冒頭の女性)

舌下免疫療法は、15年からダニアレルギー用の薬も保険適用された。

ダニ用は錠剤タイプ

花粉症は、花粉飛散時期にだけ症状が現れる「季節性アレルギー」だが、ダニアレルギーは季節を問わない「通年性アレルギー性鼻炎」の代表格だ。ほこりに含まれるダニや、ダニのふんなどに反応して、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどが現れる。アトピー性皮膚炎やぜんそくを併発することも多い。花粉症の患者層は30~60代に多いのに対し、ダニアレルギーは子どもから20代の若者が中心だ。

保険適用された薬は液体ではなく、錠剤を舌下で溶かすタイプだが、使い方はシダトレンとほぼ同じ。国内2社の製薬会社が海外から輸入販売している。鳥居薬品の「ミティキュア」と、塩野義製薬の「アシテア」だ。

「ミティキュアは舌下に入れるとすぐ溶けます。原則として2週間かけて投与量を増やしていきます。アシテアは舌下で溶けるまで2分ほどかかりますが、3日間で投与量を増やします。両者の効果の違いはわかっていません」(岡本医師)

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