山口絵理子・マザーハウス代表取締役--カワイイが変える途上国、27歳「劇場経営」の突破力【上】

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

NGOが唱えるフェアトレードは、市場ニーズは二の次、発展途上国の生産者の「支援」が第一義だ。生産者の生活を安定させるために、長期契約を結び、毎月、「定量」を「公正価格」で発注する。が、それでは、商品がタンスにしまい込まれて、それきりになってしまう。

「じゃ、私たちは何なの、といったら、第一目的は、お客様の満足。満足してもらうために、いいものを作る。結果、雇用が生まれ、生産者が自立し、途上国に産業ができる。それが、いちばん健全な行き方」

社会を変えたいという熱い思い。そして、ビジネスの力への直截(ちょくせつ)な確信。その結合が、いかに人々を奮い立たせるか。それを劇的に示したのが、若き日の松下幸之助だ。

昭和恐慌後の1932年、幸之助は「水道哲学」を全社員に宣明した。水道の栓をねじれば存分に水が出てくるように、生産によって物資を無尽蔵たらしめ、社会から貧を取り除こう。それが、われわれの「真使命」だ。社員は歓呼した。「新人も立った。老いた人も壇上に飛び上がり、無言のまま手を打ちふり」「使命に殉ぜんことを誓った」(松下幸之助著『私の行き方 考え方』)。

山口の思いもまた、劇的な喚起力を持つのではないか。遠藤が言う。「まだ、ホップ・ステップ・ジャンプのホップにもなっていない。が、大化けするかもしれない」。

むろん、山口はビジネスを大きくするために、「社会」を思ったわけではない。どころか、山口の原点は、「社会」と「自分」の対立である。

いじめ、奇跡の慶應合格 国際機関で知ったこと

1枚の写真がある。小学校の入学式。誇らしく、ちょっとはにかんでうつむいて。しかし、この子を待ち構えていたのは、6年間の地獄だったのだ。 

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事