山口絵理子・マザーハウス代表取締役--カワイイが変える途上国、27歳「劇場経営」の突破力【上】
「人生で最初の、いちばん大きな試練」だった。一斉に起立して、おはようございます。なぜ、同じことをしなければならないの。そう言ったら、教室から閉め出された。「自分の意見を言ったら、いじめられるんだ。家に誰か訪ねてきても、テーブルの下に隠れてしまう子供でした」
怖くて学校に行けない。が、母親を悲しませたくない。今日は1時間、明日は2時間。涙を流し、ガクガク震えながら、机に座っていた。
中学に入ると、押さえ込まれていた「自分」が爆発した。学校をサボって酒を飲み、パチンコ屋に入り、ケンカする。あのまま行ったら、どこまで転げ落ちたか、と思う。
転機は、「ケンカに強くなりたい」と始めた柔道である。「負けたら悔しい。もう一度、頑張ろう。その繰り返し。自分のエネルギーが向かう方向を決めてもらった感じ」。
高校は埼玉県最強の柔道部を擁する大宮工業高校に進学した。たった1人の女子部員として、5時の朝練から夜10時半まで柔道漬け。吐いて、落とされ、靱帯を切る。凄絶な男子柔道部のしごきに耐え抜き、ついに全日本の舞台に立った。
手に入れたのは、自ら設定した目標をクリアした「自分」への自信である。同時に、小学・中学時代、その「自分」を抑圧し続けた「社会」への疑問が、頭をもたげてきた。あんな教育システムを作った社会がおかしい。政治家になって社会を変えてやろう。それには、まず一流大学に入学しなければならない--。
が、高校の偏差値は40近辺。教師も「絶対、可能性はない」と“太鼓判”を押してくれた。ところが、奇跡が起こった。慶應大学湘南藤沢キャンパス総合政策学部に合格。
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