■納豆と仲良くして白飯を奪取せよ
しかし、今度の「納豆ごはん専用ふりかけ」は先行商品の代替ではない。筆者は「納豆には醤油派」なのだが、多くの人は納豆に付属した専用タレを使用する。付属ではない専用タレも発売されているが、ごく少数しかない。そして今回の商品は、プレスリリースに、添付のたれやからしを入れて、ふりかけを混ぜるだけという使用方法。
つまり、「タダで付いているものを使えるのに、さらにコストがかかるものを使用させる」という、需要創造をしなくてはいけないのが今回のチャレンジなのだ。既にたまごかけご飯がブーム化しており、さらに先行して専用醤油が数多く発売されている状況と、納豆ご飯は状況が違う。
しかし、同社があえてチャレンジするのは、もうしばらくは続くと思われる不景気の影響で、食卓では卵かけや、納豆、ふりかけなどが多く使われるという商機を活かしたかったのであろう。「卵かけには対応した。あとは、納豆に奪われた白いご飯を、納豆の中に入り込むことによって、自社のビジネスの場としよう」という同社の執念を感じる。その執念によって、プラスαのコストを消費者に納得させることができるだろうか。
有望な市場ではある。6月にアイシェアが行ったインターネット調査「食べて満足!ご飯の友ランキング」によると、ご飯にかける好きなものとして、複数回答で、トップは「海苔」60.4%、2位は「納豆」59.7%、3位は「明太子」55.6%。次いで「生卵」が54.3%、「ふりかけ」が52.8%という結果である。
ふりかけを上回る人気の納豆にうまく用いられれば、丸美屋の「白いご飯シェア」はますます上昇するのである。今回は、卵がけご飯と違い、ブームに乗るのではなく、自らブームを創り出そうとしている。
たかがふりかけ。されどふりかけ。毎日食している白いご飯の上でも、マーケターの熱い戦いが繰り広げられている。そう考えるだけで、マーケティングリテラシーが上がる。何より、毎日の暮らしが楽しくなる。さあ、納豆ごはん専用ふりかけの発売日は8月20日。ぜひ使ってみてほしい。そして、マーケターの想いを感じ取ってみよう。
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
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