キリンとサントリー、強者連合の描く野望
統合交渉が明らかになった食品業界におけるビッグネーム、キリン、サントリー。発端となるトップ同士の話し合いがあったのは1年半前。目下、年内合意を目指して交渉を続けており、これが実現すれば売上高で4兆円に迫る国内最大級の食品メーカーが誕生する。
不況下の救済合併でも、過剰設備から赤字を垂れ流す弱者同士の寄り合いでもない。業界における「勝ち組」と称される企業の統合構想は近年でもかなりまれなケースだ。
国内市場の縮小が続く中、ビールを含めた食品業界の再編統合は時間の問題ともいわれてきた。たとえ勝ち組であっても次の一手を打つのは、「これまでの延長線上ではやっていけないという象徴的な出来事」(みずほ証券の佐治広アナリスト)だといえる。
キリンホールディングス首脳は「成長のために何ができるか。協議は初期の段階だ」と慎重だが、「決断が早くアグレッシブ」とも評されるサントリーホールディングスの佐治信忠社長は「キリンはピッタリな相手。うまくいけば年明けにでも会見をしたい」と鼻息が荒い。
理想的な補完関係
サントリーにとって新たな創業となる--。佐治社長は14日、社員にメールでメッセージを送った。確かに今回の統合は、熾烈な競争が続くビール市場のシェアアップをはるかに超える意味がある。
今年、創業110周年を迎えたサントリーは「グローバル総合酒類食品企業」を目指して、持ち株会社制にグループの形態を変えたばかりだ。