通信業界は、信用力見通しは安定的も、景気低迷で中期的な成長余地が一段と狭まる懸念《スタンダード&プアーズの業界展望》
また、市場の成熟化が進む中で景気の低迷が重しとなれば、固定通信事業の収益低迷やFTTHサービスへの先行投資負担を補ってきた携帯電話事業で収益力の低下圧力が増したり、FTTHサービスや次世代ネットワークサービスの本格的な収益貢献がさらに遠のくなど、各社の中長期的な成長余地が一段と狭まる懸念もあるとみている。
競争環境は国際的にみても高い安定度
各社最大の事業となっている国内の携帯電話市場では、主要3社による寡占構造が継続している。2009年6月末時点の累計契約数の事業者別シェアは、ドコモが50.6%、KDDIが28.6%、ソフトバンクモバイルが19.3%、2007年3月にサービスを開始したイー・モバイルが1.5%である。
累積契約者数の前年比伸び率は、ソフトバンクが市場に参入した2006年4月から2008年初頭まで5%台半ばから後半で推移し、2008年春には6%を上回る高い伸びを記録したが、同年後半以降は4%台まで低下している。
「分離プラン」導入を契機に頻繁な買い替えが抑制されたことを受けて、2009年3月期の携帯電話端末販売台数は、NTTドコモが2013万台(前年度比21.8%減)、KDDIが1081万台(同31.7%減)、ソフトバンクモバイルが842万台(同14.8%減)と大きく減少した。
分離プランの定着と、同プラン導入に伴う契約期間や料金体系の見直しが進んだ結果、端末の販売価格上昇と解約率の低下、端末の買い替えサイクルの伸長による販売奨励金や手数料負担の軽減が業績にプラスに働いている。
とりわけ、解約率は2009年1~3月期でNTTドコモが0.52%、KDDIが0.77%、ソフトバンクモバイルが0.90%(3Gポストペイド)と非常に低い水準にあり、顧客獲得・維持費用の削減にもつながっている。
米国のベライゾン(A/ネガティブ/A‐1)とAT&T(A/ネガティブ/A‐1)の2009年1~3月期の携帯電話事業の解約率はそれぞれ1.14%(ポストペイド)、1.2%(同)でここ数年比較的安定的に推移しているが、日本の各社の解約率は海外の同業他社と比較しても一段と低く、日本の競争環境が安定していることをうかがわせる。