通信業界は、信用力見通しは安定的も、景気低迷で中期的な成長余地が一段と狭まる懸念《スタンダード&プアーズの業界展望》

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 一方、ARPU(契約者1人当たりの平均収入)の減少ペースは徐々に緩やかになっているため、分離プランに端を発した通信料値下げの影響はほぼ一巡したとスタンダード&プアーズではみているが、ARPUの減少が続いている点は引き続き懸念要因である。

また、解約率の低さは、裏を返せば市場が成熟し新規顧客の獲得余地が一段と狭まっていることも意味している。加えて、様々な新サービスに対応した携帯電話端末の販売が落ち込んでいることで、各社が力を入れているデータARPU向上に向けた施策の効果にも悪影響を与えかねず、中長期的に収益力にマイナスの影響を与える可能性もあるとスタンダード&プアーズは考えている。

 割賦販売の定着で割賦立て替え金の発生と代金回収のバランスは改善へ

ここ1~2年、携帯端末の割賦販売の増加による資金負担が各社で財務上の重しとなったほか、海外事業投資による資金需要が生じたNTTドコモの事例もあり、財務面での改善は停滞している。

中でも、携帯端末の割賦販売は契約者が支払うべき端末代金の大部分を分割して回収するため、運転資本の圧迫要因となり資金需要が発生した。このため、ソフトバンクは割賦売掛金残高の増加に対応して、2007年6月以降、四半期ごとに割賦債権の流動化を実施し、NTTドコモも2008年6月以降、社債の発行による資金調達を実施してきている。

しかし、割賦販売制度が定着し割賦債権の回収も本格化してきたことから、割賦立て替え金の発生と代金回収のバランスは大きく改善に向かっている。例えば、割賦販売を他社に先駆けて導入したソフトバンクでは、ソフトバンクモバイル(格付けなし)の2009年3月期連結営業キャッシュフローが、前年度の344億円から3019億円へと大幅に改善した。割賦債権を含む売上債権の増減が営業キャッシュフローに及ぼしたマイナスの影響の度合いが、前年度の3016億円から355億円まで大幅に減少したことによる。

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