リップル「帝国」の黄昏、反乱と破産法11条

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 それでも、RHJは昨年末、メ社の額面387億円の発行済み社債をたったの65億円で買い戻す奇策に出た。流動性危機のときなら、大幅値引きでも投資家は償還に応じるという、ファンドならではの読みである。メ社は債務を削減し、311億円の償還差益を計上した。が、コリンズ氏の粘りもここまで。

年が明け、クライスラー、GMともに破産法11条申請の気配が濃厚になると、ビッグ3への納入比率45%、中でもクライスラー向けが25%のメ社の運命は決まった。「日本に売り込もうと、メ社も旭テックの中に技術センターを作った。が、動き出す前に足元が崩れた」(入交社長)。

メ社倒産で旭テックは319億円の出資評価損を計上したが、すべて“スルー”したカネだから、自分の腹(キャッシュ)は痛まない。最大の被害者はもちろん、RHJとその株主だ。旭テックに繰り返しつぎ込んだ総額337億円のうち6割の減損を余儀なくされた。

しかし、コリンズ氏はまだあきらめない。裁判所の管理下にあるメ社から主力事業のパワートレイン部門を買い取る意向を表明。ナイルスへ新たに35億円、大赤字の独ホンゼルにも5000万ユーロを投入する。「総合部品メーカー」の夢は捨てない、という意思表示だろう。

旭テックの入交社長は「時代のトレンドはグローバルな総合メーカー」と言う。「世界展開する自動車メーカーにとって、各国ごと業者ごとに部品を発注するのは悪夢。自動車メーカーは、ワンストップ・ショッピングを望んでいる。部品会社は総合化しなければ生き残れない」。

総合メーカーとして君臨するデンソーやボッシュ。同じ高みを目指すには、資金量と信頼の積み上げが、最低必要条件だ。が、既存のポートフォリオに帰らぬカネを張り付け、“反乱”に悩むコリンズ氏。夢も名声も、瀬戸際に立っている。

梅沢 正邦 経済ジャーナリスト

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うめざわ まさくに / Masakuni Umezawa

1949年生まれ。1971年東京大学経済学部卒業。東洋経済新報社に入社し、編集局記者として流通業、プラント・造船・航空機、通信・エレクトロニクス、商社などを担当。『金融ビジネス』編集長、『週刊東洋経済』副編集長を経て、2001年論説委員長。2009年退社し現在に至る。著書に『カリスマたちは上機嫌――日本を変える13人の起業家』(東洋経済新報社、2001年)、『失敗するから人生だ。』(東洋経済新報社、2013年)。

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