半導体産業の大再編がモノ作りの変化を迫る、「産業のコメ」国内自給体制に転機 



 実際、08年の半導体大手25社(米国アイサプライ調べ)に日本企業は9社あるが、うち両御三家発祥は東芝、ルネサステクノロジ、NECエレクトロニクス、エルピーダメモリ、富士通マイクロエレクトロニクスの5社を数える。それに独立系で専業色濃厚ながら、08年10月にOKIセミコンダクタを買収したロームも加えれば6社だ。残る3社もソニー、パナソニック、シャープという家電大手の併営だ。インテルのような独立系の専業メーカーが数多く存在する米国と日本は対照的である。

兼業メーカーは必然的に社内、企業集団内、あるいは国内顧客という各段階の「内需」重視に傾いた。経営者は巨額を投資した半導体工場を遊ばせてしまうのが怖いため、眼前の内需充足を狙う。設計・開発の技術者は、身近な製品企画担当者からキメ細かく要求仕様を酌み取った半導体を世に送り出してきた。

かくて身近な顧客とのすり合わせを通じ、顔の見える生産者による高品質な「産業のコメ」供給の基盤ができた。世界市場に占める日本市場の比率は08暦年で19・5%へ低下したのに、08年度上期売上高に占める国内向け比率はルネサステクノロジ59%、NECエレクトロニクス54%と過半なのも内需重視の反映だ。

だが、今や身近ですり合わせ可能な産業組織は崩壊しつつある。一連の統合後、両御三家直系企業は本体で営む東芝と08年3月設立の子会社で営む富士通の2社のみ。その東芝も論理回路などの分野について一度は「業界再編を視野」と西田厚聰社長(当時)が宣言。富士通も「半導体事業の要否は社内需要の多寡による」と野副州旦(のぞえくにあき)社長は語っていた。

つまり両御三家すべてが論理回路では事実上撤退か慎重姿勢なのだ。

95年から成熟、もう限界

だが、論理回路すり合わせ体制の崩壊は突如発生したのではない。産業が国際市場でどの発展段階にあるかを国内生産の国内需要に対する充足率で見る「産業のライフサイクル曲線」では、論理回路を含めた集積回路(IC)分野はすでに95年から成熟段階。欧米に追いつき追い越してきた日本の産業では、まず欧米からの輸入依存で製品が国内に「導入」され、やがて国内生産に成功し国内需要の過半を充足する「輸入代替」、さらには貿易黒字を稼ぐ「輸出成長」へ達するものの、いずれはピークをつけて「成熟」、そして貿易赤字の「逆輸入」となる過程を表す山型曲線となるのが通例だ。日本の集積回路も、輸入代替を経て79年に輸出成長へ達したものの、94年にはピークをつけ、右肩下がりになった。

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