実はマイナス金利政策の導入で消費は減る 代替効果より所得効果のほうが大きい

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物価の上昇に所得の伸びがまったく追いつかなかった(撮影:今井康一)

貯蓄を増やすのは教科書どおりの合理的な行動

現在の生活水準は最低限度よりもある程度高いが、公的年金だけでは最低限度の生活水準を維持できないと考えれば、老後のために一定の資金を蓄えるという資金計画は合理的だ。金利が低下した際に、老後の生活満足度が大幅に低下するのを防ごうとして、現在の生活を大きく切りつめてでも65歳時点での目標貯蓄額を達成しようとするのは、経済学の教科書どおりの極めて合理的な行動ということになる。

金利の低下や物価上昇率の高まりが期待通りの代替効果を発揮するには、少なくとも長期的な所得水準が低下しないことが必要だ。異次元緩和で物価がある程度上昇しても消費がうまく拡大しなかった原因は、所得の伸びが物価上昇にまったく追いつかなかったからである。物価が上昇するようになればすべての問題が解決するかのような議論は間違いで、消費者の所得が増えなければ日本経済は低迷から脱出できない。

教科書を読めば、手品のようなびっくりするような政策があるわけではなく、地道な政策の積み重ねしか方法はないように思える。

櫨 浩一 学習院大学 特別客員教授

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はじ こういち / Koichi Haji

1955年生まれ。東京大学理学部卒業。同大学院理学系研究科修士課程修了。1981年経済企画庁(現内閣府)入庁、1992年からニッセイ基礎研究所。2012年同社専務理事。2020年4月より学習院大学経済学部特別客員教授。東京工業大学大学院社会理工学研究科連携教授。著書に『貯蓄率ゼロ経済』(日経ビジネス人文庫)、『日本経済が何をやってもダメな本当の理由』(日本経済新聞出版社、2011年6月)、『日本経済の呪縛―日本を惑わす金融資産という幻想 』(東洋経済新報社、2014年3月)。経済の短期的な動向だけでなく、長期的な構造変化に注目している

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