「地方創生」はディズニーの仕掛け人に聞け! 人を集める「HAPPINESS」12の要件
堀の自宅には、堀が奮闘した当時のことを詳細に伝える大量の資料が残っている。今後、連載の中で少しずつお話していくが、その資料を見ると、ディズニーランド開発の実に細部に至るまで、堀は心を配っていたことがわかる。たとえば、冒頭のホーンテッドマンションについて、堀は生前、筆者にこう話してくれた。
「欧米のお化けというのは日本のお化けと感覚が違います。特にホーンテッドマンションのご主人ゴースト・ホストは日頃からパーティーが大好きでみんなを自分の屋敷に招待して楽しむのがたいへん好きだった紳士です。その紳士は亡くなってもなお、人を招待したいという気持ちが地上に残って、みんなを招くことになり、愉快なお化けのショーが展開されるのです。ですから、日本人がイメージする怨念とか恨みの世界ではありません。善意の魂の世界なのです。
ところが、これを日本人の役者にやってもらうと、どうしても、おどろおどろしくなって、欧米のフィーリングにならないのです。このフィーリングが、あの声にはあるのです」と。そこまで考えて作り込まれているのが、東京ディズニーリゾートというテーマパークなのだ。
ご承じのとおり、東京ディズニーランドは、1983年4月15日にグランドオープンし、その当日は約2万人のゲストが訪れた。初年度の年間入場者数は約1000万人。その後、東京ディズニーシーも2001年9月4日にグランドオープンし、2014年は合計で約3137万人 が訪れた。大成功している数少ないテーマパークのひとつである。
東京ディズニーランドは、米国のディズニーランドをコピーしただけというイメージを持っている方も多いかもしれない。しかし、堀が残した手記によると、事実は大いに異なる。東京ディズニーランド開園まで23年もの長期におよぶプロジェクトは、千葉県を舞台とした、壮大な地方創生物語であった。今回の連載で紹介する堀の実践手法は、地方創生の事業に携わる方々にとって有益なものとなるのではないかと思う。
地方創生の第一歩は、HAPPINESS の検討から
さて、地方創生で、多くの関係者が頭を悩ませているのは「人の集め方」である。一口に人集めといっても、地方や観光地など地域全体に人が集まる場合と、イベントや商店街、アウトレットモールやお店など特定の施設に人が集まる場合など、さまざまなものがある。もっと広くいうと、学校に生徒が集まる、会社に社員が集まる、工場に行員が集まるといったものもある。
シチュエーションも目的もさまざまで、どう手をうつべきかわからないという人、自治体は多いかもしれない。しかし、「いかに人を集めるか」という命題に対して、東京ディズニーランドや東京ディズニーシーの経験を通じて、堀が得た大きな結論はたったひとつ。「人は HAPPINESSを求めて集まる」のだということ。つまり、人にどんなHAPPINESSを提供できるかということだ。
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