リクルートの七変化--強者を覆うネット時代の内憂外患《広告サバイバル》

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急ピッチで多角化を進めるリクルートだが、それでも今後ネットとの競争に勝ち抜くのは容易ではない。

そもそも、ネットビジネスは価格勝負に陥りやすい。利益を出すには運営費も最小限に抑える必要があるが、そこで重荷になりかねないのが同社の強みでもある人材だ。「今期は業務フローを再度見直して固定費を大きく落としていく」(柏木社長)と、ネット事業の収益性向上は喫緊の課題であるのは間違いない。また、現在好調のフリーペーパーもネットとの競争にさらされている状況は変わらない。

大企業ゆえの悩みも浮上している。その一つがリクルートを支える営業マンの変質だ。「かつてはお客さんの支援や個人の成長を目指すことがモチベーションとなっていたが、最近はおカネがモチベーション。有名大学を卒業した“上から目線”で営業をするえらそうな子たちが、街の飲食店などから信頼を得られるかどうか。飛び込みをやらせると、親からクレームが来ることもある」と高城氏は危惧する。

とはいえ、同社ではネットに紙で対抗した『ホットペッパー』など後追いでも、ピンチをチャンスに変えて成功した事例も少なくない。最近でも、スーパー等のチラシと1週間分のテレビ番組表が載った情報誌をセットにして郵送するなど、実験的なサービスも複数展開、新たな種まきにも積極的だ。「軍隊式」と評されるほど機動力のある営業部門やラックなどの拠点開発部門の連携も、新参者にはまねのできない強みだろう。

加えて、同社は「紙一枚の値段も徹底的に交渉するし、媒体にどんなノリを使うかだけで5時間も会議をする。意外に筋肉質」(関係者)ともいわれる。

媒体と営業の総力戦で独自の広告ビジネスを築いてきたリクルートはネット時代も勝ち残れるのか。自己変革力が試されるのはこれからだ。

(週刊東洋経済)

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