リクルートの七変化--強者を覆うネット時代の内憂外患《広告サバイバル》

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ネットの台頭で崩れる参入障壁

「最低応募数に達しなかった場合はその差額をお返しします」。4月、リクルートは転職者向けサイト「リクナビネクスト」で、応募者の数によって収入を得る成果課金型サービスに踏み切った。従来の広告収入型であれば、応募数に関係なく枠さえ売れれば一定の収入を得ることができた。が、成果型では応募者数が最低保証を割り込めば同じ枠でも単価は下落してしまう。それでも、同社が媒体や課金形態の多角化を進める背景にはネットの台頭がある。

紙媒体が中心だったころは、独自のニッチ媒体に加え、全国を網羅する販売ルートが高い参入障壁となっていた。ところが、ネットの普及によってこのモデルは瓦解寸前。しかも、「リクルートがターゲットとする20代がネットに流れたことで広告価値は相対的に落ちている」と、同社で営業を経験した後『アントレ』を創刊した現セレブレインの高城幸司社長は指摘する。

ターゲット流出を防ぐために、1990年代後半からはリクルートも猛スピードで媒体の無料化やネット・モバイル化を進めてきた。

中でも力を入れているのがフリーペーパーで、近年は対象や地域をさらに絞った「狭域」へのシフトが目立つ。98年に創刊した地元企業の求人を扱う『タウンワーク』はそのはしり。後に続いた『ホットペッパー』も対象エリアを半径2キロメートル以内に絞って飲食店情報を掲載、狭いエリアの情報誌を日本全国で展開するという新たなモデルを築き上げた。

拡大が続くネットでも「狭域」分野を強化中だ。1月から新卒者向けの「リクナビ」で地元就職希望者向けサイトを始めたほか、地元密着型転職サイト「はたらいく」を開始。「狭域」サービスは広告単価も低いが、これまで取り込めなかった広告主を取り込む機会にもなるだけに、「今後も利用者と広告主の情報を細かくセグメント化していく」(柏木社長)考えだ。


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