映画版「路線バスの旅」はどこまでガチなのか 言葉の壁と台風に見舞われ大波乱の台湾縦断

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バスターミナルで路線を尋ねる3人 ©2015「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」製作委員会

バス事情の違いは旅のルールにも影響してくる。日本と違い、台湾では隣町へ行くようなローカルの路線バスでも、近くに高速道路が通っていれば高速を経由するのだという。乗り継ぎの旅では高速道路を通るバスの利用はルール違反だが、一見普通の路線バスのため、高速を通るバスだと気づかない。

さらに、現地の人にバス路線を尋ねても、鹿島さんは「高速バスを使わない」という番組のルールは当然ながらなかなか理解されない。「聞く人聞く人に『なぜ高速バスに乗らないんだ?』『高速を通らないで行くバスはないよ』と言われていた」と振り返る。

もっとも、番組の知名度が高い日本国内であっても、乗り継げる路線を人に尋ねるのは難しく、その聞き方に太川さんの「すごさ」があるのだと鹿島さんはいう。自分たちが目指す場所まで行くにはどうすればいいかといった聞き方ではなく「案内所に行って『この町の人たちは(目的地より少し手前の)この病院にどうやって行ってるんですか』というような聞き方をするんです」。

このように尋ねると「目的地まで直行できるバスはない」と答える人でも「病院へのバスはどこからなら乗れる、といったルートを教えてもらえるのだという。さらにそこから「じゃあこの病院から先へは…」と尋ね、ルートをつないでいくのだ。

初の海外で「原点回帰」

その手法が台湾でも生きたのかといえば、鹿島さんは「いや、生かされてないです」と笑う。通訳を通しての会話では、細かなニュアンスが伝わらないためだ。鹿島さんは「昔を思い出しましたね」という。

「番組初期のころは太川さんもあんなに乗り継ぎのプロフェッショナルではなくて(笑)、行った先で出会う人で(乗るバスが)決まっていたんで」。当時はルートを探し出すための聞き方もシンプルで、出会った人に教えられたルートをたどる形で旅が進んでいったという。「今回の映画はそういう、初期のやりとりのような面白さがある」という。

「かっこよく言えば『原点に戻った』という感じですかね。そんなに大上段に構えては言えないですけど(笑)」。自分たちの力だけではどうにもならない「ガチ旅」ならではの面白さ。鹿島さんは「海外でそんなことをやって映画にしたという無謀なことを楽しんでもらえれば、それが一番」と語る。

見るからに活気あふれる都市や風情ある台湾の田舎町など、映画ならではの大画面に広がる風景はテレビで見る「乗り継ぎの旅」とは違った醍醐味がある。果たして3人はゴールにたどり着けたのか?「ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE」は2月13日全国ロードショーだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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