「地域ブランド化」が失敗に終わる3つの理由 難易度が高い上、凡庸な商品では無理がある

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年末年始は家族や友達と集まりパーティなどで魚の消費量も増えわけですが、卸売市場は閉まっており、新しい魚が流通しません。そこで羽田市場では年末年始返上で、地方の漁師と連携して地方空港からとれたての魚を空輸し、東京の百貨店などで販売。空輸のため、その日の朝とれた魚が夕方には都内に並び、大人気となり、高値で取り引きされます。

地方の漁師も高い魚価で取り引きができるため、やる気になっています。熱心な漁師は血抜きし、氷詰めを細かく行うなど商品自体の改善にも取り組み、自分の名前を入れたチラシもつける。名前が顧客にまで伝わることで、フェイスブックで連絡がきて、指名買いにまで発展しています。

漁業分野においても新たな流通システムに対応し、皆が売らない時に売ることで、地方商品の付加価値を高める。ブランド化よりよっぽど道筋がハッキリした打ち手です。

向上例2:特定メニューに最適な品種を作って売る

独自の農園経営で有名な、久松農園さんも好例です。

一般的な市場流通品種をつくって市場で売るのではなく、先回りで取引先となる飲食店を開拓。さらに、その飲食店のシェフが考案するメニューに併せて最適な野菜品種選定をし、作付けをする工夫をされています。

商売の結果として形成されるブランド

レタスひとつとっても、大量生産をしている一般品種を少量つくっても儲からない。しかし、取り引きしている飲食店が冬に出すメニューである「レタス鍋」に適した、熱を加えるとうまくなるレタスを作れば、競争力が生まれます。他にはない飲食店にプラスとなる価値を提供し、農作物の価値をあげています。

そして、これらの取り組みは、実績をあげているだけでなく、個別に「ブランド」を生み出しています。ブランド作りから入るのではなく、顧客に対応して流通を変え、商品さえも変え、顧客との関係値も組み替える。結果、顧客からの熱烈な支持を集め、信用が拡大し、他ではない安心感、特別感へとつながっています。

ブランドがあるから商品が売れるのではなく、商売の結果としてブランドが形成される。これらの事例をみると、ブランドとはすなわち、日々の積み重ねの上に成り立つ結果だと気付かされます。

自分たちは何も変わらず、単に補助金をつかったブランド化で一発逆転、だなんて都合のよい話はありません。まずは地方生産者とその関係者が、積極的に時代の変化に対応するか、しないかが問われています。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年生まれ。高校在学時からまちづくり事業に取り組み、2000年に全国商店街による共同出資会社を設立、同年「IT革命」で新語流行語大賞を受賞。

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、一橋大学大学院商学研究科修士課程修了。

2008年に設立した熊本城東マネジメント株式会社をはじめ全国各地のまちづくり会社役員を兼務し、2009年には全国各地の事業型まちづくり組織の連携と政策提言を行うために一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立。2015年から都市経営プロフェッショナルスクールを設立し、既に550名を超える卒業生を輩出。2020年には北海道の新時代に向けた「えぞ財団」を仲間と共に発足している。また内閣府地域活性化伝道師等の政府アドバイザーも務める。

著書に『まちづくり幻想』『稼ぐまちが地方を変える』『凡人のための地域再生入門』『地方創生大全』等多数。

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