巨額増資を繰り返す3メガバンクの脆弱性、自力増資だけで追いつくのか

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 一方で、資本の調達コストは急上昇した。MUFGが昨年11月に発行した普通株は株価の下落から、調達額が当初予定の6000億円を大幅に下回った。しかし、残る2メガとも結局、普通株増資を決断せざるをえなかったのは、資本の質を問う議論が欧米で高まったためだ。

銀行の国際的な規制監督上の自己資本比率規制、いわゆる新BIS規制(バーゼルII)では、中核的自己資本であるTierIに優先出資証券を一定の範囲で算入することが認められている。しかし、普通株に比べて利払いや配当の抑制が難しく、元本の返済順位も高い優先出資証券や優先株は資本としての質が低い。

この議論が、にわかに高まったのには、おそらく二つの理由がある。一つは、欧米においては大手金融機関の破綻リスクが認識されて、債務超過でないかどうかが真剣に危惧されたこと。もう一つは、「公的資金であっても、優先株が普通株に転換されれば、質のよい資本」という競争上都合のよい理屈を展開したいからだろう。実際には欧米大手銀の多くは引き当て不足で、ローンの本格処理はこれから。実態は債務超過と見られる。

邦銀の収益基盤の構造的な問題

だが、3メガも自力増資は限界に近づき正念場だ。09年3月期の決算はそろって大赤字となり先行きにも不安が募る。MUFGとみずほFGは与信費用と株式減損で、それぞれ約4000億~6000億円の巨額損失を計上。SMFGは相対的に株式の保有が少なく簿価も低かったが、資本の質の上で同社のアキレス腱となっていた“繰延税金資産”の取り崩しを行って最終赤字となった(下表参照)。

今10年3月期の業績予想については、3メガとも、株の減損は峠を越したとし、与信費用についてはMUFGのみが若干の増加を見込み、他の2メガは、減少を見込んでいる。MUFGでは最終利益の予想を300億円、みずほFGでは2000億円、SMFGでは2200億円としている。

しかし、与信費用の減少を見込むのは甘いのではないか。

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