豊富な森林資源を生かす林業政策を、自立を促すインフラ整備が重要 

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 戦後の植林政策は、もともと治山治水が目的だった。次いで住宅資材供給という観点から、生育が速く製材に向く針葉樹が推奨された。本来パルプ生産目的であった製紙メーカーでも、木材の輸入自由化を機に、製紙用には安価な輸入チップを使い、植林は製材用に高値で売れるスギ・ヒノキに転じた。国産材の価格が輸入材の3倍であった当時、企業行動としては当然の選択だった。

しかし、林業のタイムスパンは長い。ようやくここ数年、林齢が40~50年に達し、間伐材ではなく本格的な森林活用期に入ろうとしている。だが現状では、その森林経営ができる状態ではなくなっている。

第1次産業の中でも、林業はインフラの整備が遅れている。地域ごとに森林組合はあるものの、相互のネットワークも形成されておらず、植林から伐採、販売、物流まで長期的な視点に立って計画的に森林経営を行っているところはほとんどない。

農業との兼業が多く、林業のみで生計を立てている所有者が少ないことや、現場作業の従事者が高齢化などで減少しているなどの事情はあるが、年間予算が5000億円といわれる治山事業や環境対策事業があれば、それで食べていけるという側面も否めない。「木は切らなければ育つ。赤字を出してまで切らなくてもいい」のだ。

インフラも経営マインドもない

治山のほかにも、経済対策として、雇用の受け皿として、また、森林資源保護のための機材購入費としてなどさまざまな名目で、森林管理の分野には手厚い補助金が用意されている。このため、「積極的に林地経営で収益を上げていこうという経営マインドが育っていないのが最大の問題」と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの相川高信氏は言う。

所有権が細分化されていること、山の中では境界が長年の間にあいまいになっているという問題もある。所有者ごとに林地経営への考え方も熱意も異なる。まとまった林地経営がほとんどできない状況である。

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