09年第1四半期は、未曾有の景気後退局面で格下げが続く《ムーディーズの業界分析》
SVP−グループ・クレジット・オフィサー 大槻 栄美子
2009年年初より、急激な業績悪化を背景に日本の非金融事業会社に対するネガティブな格付けアクションが急増し、その総数は42件となった。これら格付けアクションの対象となった発行体のファミリー数は36であり、このうち6つの発行体については複数回にわたってアクションがとられた。36の発行体のうち、格下げ7、格下げ後さらに格下げ方向で見直し継続3、格下げ方向での見直し開始5、格付け見通しのネガティブな方向への変更は21であった。このうち3つの発行体が複数ノッチの格下げ対象となった。2009年3月末時点で、格下げ方向での見直し中の発行体が13、ネガティブな格付け見通しにある発行体が24であり、合わせてムーディーズが格付け対象とする日本の非金融事業会社数の凡そ30%を占めている。同割合は2008年9月末時点では3%、2008年12月末時点では12%であった。
2008年年間を通じたネガティブな格付けアクションの総数が37件(うち、格下げ6件、格下げ方向での見直し開始15件、格付けの見通しのネガティブな方向への変更16件)であったことと比較すると、短期間で格付け対象企業の信用力が急激に悪化していることを示している。
図2: 2009年の第1四半期は格下げが急増
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急激な信用力の悪化の主たる要因は、世界的な景気後退であり、特に輸出依存度の高い自動車や電機といった日本の企業セクターにおいてその影響が著しい。ムーディーズでは、既知となっている将来の出来事や、ある程度の確度と妥当性を持って実現が予測され得る出来事は、格付けに折り込むべきと考え、実行している。しかしながら、今回の景気悪化の規模やスピードは想定を超えており、日本の事業会社の財務および事業の状況を予想する際には、十分に折り込まれていなかった。現在、ムーディーズは日本の事業会社への影響を慎重に検討しており、深刻な影響を受ける会社については格付けの調整を行っている。今後、予想される企業の業績を再評価していく過程において、発行体によってはさらにネガティブな格付けアクションも起こり得るだろう。