「爆買い終了」におびえる店、勝機をつかむ店 本当の“商売人”は石橋を叩いて壊さない

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空港型免税店は、消費税だけでなく関税などを免除される形式の免税店で、ここで買った商品は成田空港などで受け取れるというシステム。3月には同じ銀座に韓国ロッテグループが空港型免税店をオープンさせる予定で、従来でも中国人の団体旅行客のフリータイムのメッカとなっていた銀座は、今後ますます中国人一色になる可能性が高い。

こうした動きが気になって仕方がない企業や地方自治体は多いのではないだろうか。

何しろ、本音では「中国人にもっと買い物に来てほしい」と思っていても、中国人向けの対応によってもともとの街の景観が変わったり、あるいは日本人のお得意様の反応を考え、迷っている関係者が日本中に非常に多いからだ。

私は昨年末、著書『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』の執筆に際し、全銀座会街づくり委員長の岡本圭祐氏にインタビューした。岡本氏は銀座の商店主の生の声を数多く知る人物。その頃、私も「(中国人客があまりに多く)銀座の常連客が離れていってしまうのでは?」と疑問を感じており、岡本氏に実際のところを聞いてみたかったのだ。

だが、岡本氏は意外な言葉を口にした。

「実は、免税店に行く中国人と、専門店に行く中国人、同じ銀座の中でも、お客様の層が自然に分かれてきているんです。初めての団体旅行ではラオックスなど中国人対象のお店を目指しますが、2回目、3回目に来日した方や個人旅行客は専門店を探したり、路地裏を散策したり、喫茶店に入り始めるんです」

細分化する訪日中国人の行動

私は以前、「増加する『爆買い』しない中国人たちの本音」という記事で、すでに訪日中国人の中にまったく新しい傾向が出ていることを指摘したが、銀座という限定された街に行く人々も、皆が皆、同じような行動を取るのではなく、細分化されてきていることをこのとき知った。

岡本氏は続ける。

「銀座に来る人の総数が増えることがとにかく大事です。ベースとなる人数が増えれば、こちらが何かアクションを起こさなくても、自然と彼らの消費行動は変わっていきます。だんだん、自分たちで見聞を広めて“育って”いくようになるのです。だから、銀座に中国人が増え、ベースが増えることそのものが、私たちにとって歓迎すべきことなんです」

門外漢としては、余計なお世話ながら「売れる店と売れない店が隣り合わせになっていたら、店主たちの人間関係がギクシャクするのではないか」とか、「爆買い相手の免税店や家電量販店の存在は、銀座の小さな店にとってあまり好ましい存在ではないのでは?」などと勝手な心配をしていたのだが、岡本氏は「そんなことはないのですよ」という。

むしろ銀座の内部にいる人々は、新しい商業施設が次々とできることで銀座が新陳代謝を繰り返し、活性化し、多くの人々が銀座に足を運んでくれるきっかけになると前向きに受け止めているのだという。それだけ「街が注目を浴びている」証拠となるからだ

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