北海道新幹線はどんな訓練運転をしているか 「貨物列車と共用」という前例のない挑戦

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2008年に工事は本格化したが、「北斗星」の減便など列車ダイヤの間合い拡大には苦心が多く、さらに拡大したところで確保される時間は実質的に3時間程度のため、工期はおのずと長くなる。ちなみに、新規に建設する区間における軌道工事着手は4年後の2012年だった。これらの軌道工事は2014年11月に全線が完了し、木古内駅で締結式を迎えた。

列車走行に係わる設備工事が出来上がると、次は試験運転の段となる。それは締結式に先立つ2014年10月から、まずは狭軌試験が、貨物列車用の機関車EH800形を使用して開始され、同年12月からは新幹線電車での運転も始められた。だが、ここでも営業路線という事情に影響される。

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酷寒地での冬期試験は非常に重要だ(撮影:久保田敦)

試験実施のためには運行システムを新幹線用に切り替えなければならず、普段どおりの列車が走る日中は実施できない。

切り替えにあたっては「線路閉鎖」を措置し、新在合流地点の三線軌分岐は転換可能となるようキーボルト鎖錠を撤去、次に保安装置のATCや無線を切り替え、最後に電圧を25kVに加圧して、函館から札幌の新幹線指令への統制移行を完了する。その一連の作業に1時間程度を要し、戻す際にも同様の手順が必要だ。そのぶん、実際に使用可能な時間は狭まる。

とくに入線架線試験は時速30kmの低速から始めるため、青函トンネルを含む木古内~奥津軽いまべつ間、約75kmを走り抜けるにも片道2時間を要する。次段のATC試験では、低速から信号パターンを逐一変更しつつ確認し、さらに共用走行区間では新幹線電車と貨物用機関車の各種組み合わせを検証するため、試験量は4倍になった。

これらの試験は日ごろの拡大間合いでも追いつかない。そこで、物流が止まる2014~15年にまたがる年末年始に、「北斗星」や「はまなす」等の夜行列車もすべて運休し、7時間の間合いを確保して集中的に実施した。

開業直前まで訓練は続く

一方、試験期間が長期に及ぶもう一点の理由として、気候条件の特殊性がある。酷寒冷地のため冬期試験が不可欠であり、スケジュールにその試験のぶんを織り込む必要がある。そしてその冬期試験は、一冬目で徹底的に不備を洗い出し、二冬目で万全を確認する手順が必要だ。

国土交通省の検査・監査を経て設備の完成が確認されたのは2015年7月。これに伴い施設は整備主体の鉄道・運輸機構から実際の保守管理を行うJR北海道へと、8月1日に引き渡された。これを受けて8月下旬から、乗務員はじめ実際の従事者が習熟してゆくための、訓練運転が開始された。これは3月の開業直前まで繰り返されてゆく。 

この訓練運転は、運転士一人一人が全線で、定められた回数の経験を積まなければならない。「トワイライトエクスプレス」も「北斗星」もなくなった現在、通常のダイヤで当日最後の貨物列車が共用走行区間から抜けるのは概ね0時半、翌朝最初の貨物列車が入ってくるのは概ね4時半である。

切り替えに要する時間を見込むと間合いは3時間弱となる。訓練運転は、新函館北斗から新青森への往復という形で行われる。片道1時間余りなので、この間に運転可能な本数は最大3往復となっている。運転士全員が訓練を終えるには、やはり相応の日数を要してしまうのである。

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