《検証・民主党》郵政・政策金融--郵政民営化”中止”は特殊法人廃止と両立するか
ただ、「100年に一度」と騒がれている経済危機の中で、国際協力銀行による民間企業へのドル資金供与など、すでに政府・与党も政策金融のアクセルを踏み込んでいる。経済危機という非常事態の下で政策金融の見直しがなし崩し的に進んでいるのが実態だ。
そうした中での焦点の一つが日本政策投資銀行(政投銀)だ。国際協力銀行は民営化されずに政策金融機関として残ったものの、政投銀はすでに民営化の実施段階にある。その政投銀に対しても、麻生政権は昨年末以後、危機対応業務を活用した中堅・大企業向けの資金繰り対策として、長期貸付金1兆円、コマーシャルペーパー買い取り2兆円を予算化し、実行させている。
それだけではない。政府・与党は、政府保有の政投銀株式をすべて売却する完全民営化のメドを従来の「13年10月~15年10月」から「17年4月~19年4月」に3年半延期する「日本政策投資銀行法改正案」を今国会に提出する構えだ。民主党が独自に政策金融改革の見直しを主張しようとしても、現在の政府・与党のほうが経済危機への対応を名目に先手を打っているように見える。
特別会計に潜む剰余金、積立金などの、いわゆる「霞が関埋蔵金」も、麻生政権は経済対策の原資にフル活用する方針だ。こうした政府与党のやり方について、民主党議員は苦り切った口調で「焦土作戦」と批判するが、政策金融分野でも余すところなく、先に見直しが進められてしまいかねない情勢なのだ。
こうした動きについて、大久保議員は「しかし」と言う。
「現在の自民党は、郵政民営化で議席を伸ばしたことが桎梏(しっこく)になっている。83人もの小泉チルドレンを抱える中で、小泉改革の抜本的な見直しはできないだろう」(同氏)。
現に、政投銀をめぐっては、政府・与党が民営化プロセスの「延期」という表現をしているのに対して、民主党の考え方は「中止」だ。言うまでもなく、延期は民営化の道筋はそのままにして、そこに立ち止まることを意味しているにすぎない。
白黒をはっきりさせる明快さでは民主党の「中止」のほうに分がある。
もっとも、あまり白黒を明確にしすぎると、今度は、民主党のマニフェスト(政権公約)の内容との整合性という問題に突き当たる。