ニトリ社長「退任じゃない、死ぬまで現役だ」 カリスマ創業者が社長の座を譲る理由とは?

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白井氏を後任に決めた時期や理由について、似鳥氏は「満を持してのエース登板。もう少し早くてもよかったが、現場経験を積ませるため、我慢してきた。2年前に事業会社の社長になった後、まずは1年、さらにもう1年見てみて、HDの社長として十分やっていけると、去年の暮れに確信した」と語る。

新社長の人物評については「ロマンで掲げている『住まいの豊かさを世界の人々に提供する』という気持ちが強い。つねに現状を否定し、新しい物を作る。リスクを果敢に取っていく。性格も明るく、愛嬌、度胸もある。つねに報告があり、何かあったら報告してもらえるという安心感がある」(似鳥氏)とした。

現在、ニトリが進めている都心部への出店強化は、白井氏が主導してきたものだという。「私がやるより白井がやったほうが実務は早く進む。権限委譲とは、私がかなわないと思ったときになされるものだ。そのことを数日前に本人に伝えた」(似鳥氏)。

似鳥氏は海外事業にどう向き合うか

都心部での展開を強化するニトリは、昨年4月、プランタン銀座に出店した(撮影:今井康一)

2017年2月期に30期連続の増収増益が視野に入るなど、目下のニトリの業績は好調。自社で製造から物流、販売まで一貫して手掛けることにより、業界屈指の低コストを実現している。

だが、似鳥氏は現状に安住するつもりはない。「今後は『競合』から『競争』の時代になる。上位が安全ということはなくなり、上位同士、異業種同士が熾烈な競争をする状態になるだろう。世の中の変化は早くなっており、改革のスピードを上げないといけない」と持論を展開した。

会長就任後の自身のあり方について、似鳥氏は「もっと現場に足を運びたい。毎年50店規模で出店しており、そこの店長や社員と交流したい。現場に行って、ロマンとビジョンを直接伝えたい」と話した。

ニトリは現在約400ある店舗の数を、2022年に1000店、2032年に3000店に増やすビジョンを掲げている。今後の課題は、赤字が続く中国や米国など海外での展開をどうするか、だ。

国内と同様に海外が軌道に乗らなければ、ビジョンの達成は難しい。フリーハンドとなった似鳥氏の次の動きが見ものだ。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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