まかせて大丈夫か? 民主党の政策を徹底追究《検証・民主党》

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医療保険や財政再建は方針が定まらない

国民は、歴代首相の頼りなさや、自民党の金権腐敗体質にあいそを尽かし、生活への不安も高まる中、「未知数だが、民主党に任せてみようか」と考えているにすぎない。

党内で政策論議がきちんと行われていないことは、小沢代表が党内の「次の内閣」の「閣議」に、たまにしか顔を見せないことからもうかがえる。また、医療保険制度のあり方や財政再建の道筋など、方針が定まっていないテーマは少なくない。社会保障の充実のためには、国民に税や社会保険料の引き上げなどの負担を求める一方、行革で生まれた財源は長期債務の返済に充てるなど、現実的な財政運営が必要になるが、議論はほとんどされていない。財政運営で方針が定まらないことは、政権を目指す政党として致命的だ。基本政策の欠如を国民が知った場合、支持率低下の大きな原因になる可能性があるからだ。

「格差社会」や「派遣切り」を厳しく批判しながら、いまだに労働者派遣法改正法案を提出できていない。派遣法改正問題では、党内の責任者を務める菅代表代行の姿勢が問われている。他党からも「法案が一向に決まらない」といった声が出ており、派遣問題を民主党がどこまで真剣に考えているのか、不明瞭だ。

高齢者医療制度をめぐる民主党の方針もいまだに定まっていない。

昨年6月、民主党はわずか2日の実質的な審議で、参議院で後期高齢者医療制度廃止法案を強行採決した(衆議院では継続審議)。同制度に関しても、その主張は一貫性を欠いている。というのも廃止された老人保健制度にいったん戻すという内容だが、もともと民主党は同制度の廃止を主張。00年の健康保険法改正では、老人保健制度に代わる新たな高齢者医療制度の創設の検討を盛り込んだ改正法案に賛成していた。

01年の参議院選挙時の公約でも老人保健制度の廃止を明記している。

後期高齢者医療制度は、必要な医療費の確保が将来困難になるおそれがあるという点で問題が多いが、「いったん老人保健制度に戻す」という民主党の方針もわかりにくい。また、戻した後の制度設計についても出来上がっておらず、「将来、医療保険の一元化を検討」というレベルでは、公約とはいえない。

このように主要政策はお粗末で場当たり的だ。いったい民主党には政権担当の覚悟があるのだろうか。民主党は、有権者に向けて重要政策の詳細をきちんと明らかにすべきである。


(週刊東洋経済)

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