国も電力会社も、「廃炉」への対応が甘すぎる 長崎大学・核兵器廃絶研究センター長に聞く

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鈴木達治郎(すずき・たつじろう)●1951年生まれ。75年、東京大学工学部原子力工学科卒。78年、マサチューセッツ工科大学プログラム修士修了。工学博士(東京大学)。2010年から14年3月まで内閣府原子力委員会委員長代理。15年4月から現職

賛成でも反対でもない第三者的な立場で、技術の社会的な評価をする情報機関が不可欠だ。欧米には、国会などに参考になる組織がある。日本のエネルギー基本計画にも必要性は盛り込まれており、早急に整備すべきだ。

処分場についても、中立的な組織を立ち上げるのが理想的だ。発電過程、廃炉作業、研究など放射性廃棄物の出どころを問わず、一括して引き受け、政策の賛否に関係なく安全に管理・処分する必要がある。

原発の廃炉で出る放射性廃棄物の処分場に関しては、国がやるのか、電力会社ごとに取り組むのか、はっきりしない。ただ、長期間の管理を考えると、場所は1カ所に集中したほうがいいだろう。

廃炉で出る廃棄物は、大まかに低レベルの放射性廃棄物と、リサイクルできるものと一般の廃棄物に分類できるが、すべてが「危険なもの」との印象を持たれてしまっている。今の社会的状況で処分場の立地を探す場合、地元がその分類を理解した上で受け入れてくれるだろうか。

どこかの先行する電力会社が個別の地域と仲が良くて、そこに持って行けば一気に解決するかもしれない。有力な政治家が立地自治体を探してくる可能性もある。後続の電力会社は、それに便乗すればいいと思っているのではないか。そういう押しつけ的な甘い考えや選択肢が残っているから、国も電力会社も真剣に議論しない。

住民の不安をくみ取る場がない

今までの原子力政策は、国民の信頼がなくても、地元の了解さえ取ればうまくいっていた。しかし福島のように、この「特別な関係」が崩れてしまった場合、立て直すすべがない。事故を経験しても、このことを国や電力会社は理解していないのではないか。

時間をかけてでも、いい意味で理詰めで技術を評価し、市民も参加できる透明性を持ったプロセスで仕組みをつくり、処分場を整備しなければならない。人や政治や慣例に依存して解決することは、長期的に考えると科学技術の信頼を落とす可能性がある。

廃炉にせよ、再稼働にせよ、住民が不安に思っていることに対し、意見をくみ取る場がない。原子力に関する情報を地域で一元管理する仕組みがないので、現在はたらい回しになっている。

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