マンション価格は「旧価格」へ舞い戻る、下落はこれから本番へ《不動産危機》

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購入に動きだした団塊ジュニア層

ただし、大幅値下げされる物件の主力購買層は「年収700万円前後の団塊ジュニア層だ」と言うのはマンション経営のコンサルティング会社、トータルブレインの久光龍彦社長。理由は「億ションの購入層は株価が回復しないと難しい。また、6000万円前後のセミハイグレードタイプの主力購入層である40~50歳代は減給やリストラといった可能性もあり、ローン審査が厳しくなっている。一方、団塊ジュニア層は減給やリストラの可能性がほとんどなく、購入意欲が高い」からだ。

しかし、彼らの狙いもやはり販売価格だ。みずほ証券チーフ不動産アナリストの石澤卓志氏は「住友不動産が江東区豊洲に建設した『ザ・ツイン』や東急グループが計画している『二子玉川ライズ』などは坪単価が300万円を超えてくるため、売れ行きは想定を下回っている。1次取得者層である30歳代前半は坪単価で200万円前後の物件に集まっている」と指摘する。しかも「物件価格などをネットサイトで細かくチェックし、モデルルームにコピーまで持って来て値下げ交渉している」とも言う。

団塊ジュニア層が購入に動きだした背景には賃貸物件との比較感もある。トータルブレインの久光社長は「マンション価格は04年から25%くらい上昇した結果、賃貸からの脱出希望者の需要がしぼんだが、販売価格が旧価格に近づき、彼らの需要が戻りだしている」と言うわけだ。

今後の販売価格はどうか。総じて在庫圧縮が進んでも価格が上昇に向かう可能性は薄いとの見方が多い。理由は今後とも地価や賃金水準の低下傾向が続くとみられるからだ。

先頃発表された今年1月1日時点の地価公示価格は全国平均で住宅地、商業地とも3年ぶりの低下となり、土地価格の反転傾向が鮮明になっている。さらに、民間の給与実態も低調な水準が続いており、もともと金融機関がローン審査の際に使ったマンション価格の年収倍率は07年でさえ8・7倍で、適正とされた「年収の5倍」という尺度は完全に有名無実化したままだ。

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