苦境のオリックス! 資産圧縮で耐え忍ぶ“不動産金融王”《不動産危機》

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苦境のオリックス! 資産圧縮で耐え忍ぶ“不動産金融王”《不動産危機》

「3月末の資金繰りは乗り切れたが、次の焦点は監査法人の出方。まさに綱渡り状態だ」

オリックスの幹部社員はこう現状を説明する。「今年3月の定期人事はエクセルシート2000行にも及ぶ大規模なもの。40歳代の部長クラスを子会社に飛ばし、これまでにないほど若返りを進めている。与信管理強化、資産圧縮を進める最強体制に切り替えた」。

リース最大手で、プロ野球球団のオーナーとして知名度抜群のオリックス。2008年3月期に1695億円の連結当期利益を稼ぎ、総資産は8・9兆円(06年3月期は7・2兆円)と鋭角的な拡大を遂げた同社の急成長を支えたのは、新興不動産会社向けの融資、不動産関連SPC(特別目的会社)向けのノンリコース(非遡及)ローン、不動産担保融資などの不動産関連金融に加え、グループ会社のオリックス不動産のマンション分譲、流動化事業だった。08年3月末のピークから減少しているとはいえ、12月末で3・5兆円に及ぶ不動産関連資産がある。

それだけに、不動産市場の急悪化はオリックスの経営に手痛いダメージを与えている。貸倒引当金繰り入れなど与信コストが拡大したほか、マンション分譲最大手の大京や富士火災など持ち分法適用会社の損失も膨らみ、2月9日には09年3月期の純利益予想を従来の1050億円から150億円へ修正した。

同時に広がったのが資金繰り不安説だ。アナリスト説明会で「12月に転換社債1500億円の発行を行ったことに加え、銀行団と結んだコミットメントライン(融資枠)の空き枠が2500億円あり資金調達の問題はない」(梁瀬行雄社長)と宣言。しかし、不安は払拭されなかった。「不動産業者向けの貸付金への引当金は12月末で2%弱に増えたが、少ない印象。引当金、評価損のサジ加減で無理に黒字を維持しているのではないか」(証券アナリスト)。株価は急落し、一時期は2000円を割り込む水準まで売り込まれた(3月末は3170円へ回復)。

こうした環境下、営業の現場は「管理強化」「債権回収」一本やりだ。期央の時点でもくろんでいたプロジェクトを実行すれば年度末までに3000億円ほど新規に不動産投資をする予定だったが、これを断念。逆にこれまで拡大してきた総資産を7・8兆円程度までスリム化する方向へ舵を切った。そして、5・5兆円ある有利子負債の圧縮を図り、嵐が通り過ぎるまで耐え忍び反転の機会が訪れれば真っ先に仕掛けていく--これがオリックスの現在の経営方針である。

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