不動産・マンションはどこまで下がる?--自壊する危機の構図《不動産危機》
昨年から本格化した不動産不況はクライマックスの局面に近づいたようだ。そう思わせる現象が相次いでいる。
まず、地価下落の加速だ。3月下旬に発表された2009年1月1日現在の公示地価では、全国平均の地価は3年ぶりに下落に転じた。大都市圏では地価上昇地点は皆無で、名古屋や東京都心部を中心に前年比2割以上の下落率を記録する地点が多発した。しかも、この公示地価は実態より甘い評価というのが一般的な受け止め方。「たとえば東京圏の商業地が平均で6・1%下落したというが、現場取引の実感では、この数倍の下落率があったと見ていい」(業界関係者)。景気の急激な後退に伴い、足元では一段と地価下落に拍車がかかっている可能性が高い。
地価先安感が強まる中、不動産取引はパタリと止まった。都市未来総合研究所の調べでは、08年度(2月まで)の不動産売買は前年度同期間と比べ、件数で59%減、金額で65%減もの激減である。同研究所の佐藤泰弘・主席研究員は「前年度のバブルの反動もあるが、特にSPC(特別目的会社)形態の私募ファンドや建設・不動産会社による買い減少が目立つ」と言う。
マンションをはじめ住宅価格も下落が目立ってきた。出血覚悟の在庫処分で、当初価格の2割、3割引きという“たたき売り”が話題となり、一部のモデルルームは活況を呈した。売れ残り物件を再販業者が元値の半値近辺で買い取り、2~3割引きで売るといったアウトレットマンションも一般化。昨年半ばまでは建築費上昇を上乗せされ、04年ころの価格より2割前後も値上がりしていたマンション価格だが、消費者の所得環境悪化に伴う在庫急増を受け、「価格崩壊局面」に突入した。
そして、不動産業界に吹き荒れる淘汰の嵐だ。この3月にも不動産ファンド運営のパシフィックホールディングス(HD)、マンション分譲のエスグラントコーポレーション、アゼルが破綻。負債総額数百億円超の大型倒産が日常茶飯事になっている。その多くがマンション販売の不振や不動産流動化(短期転売)事業の失敗によるものだ。