不動産・マンションはどこまで下がる?--自壊する危機の構図《不動産危機》

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自滅する危機の構図 “崖っ縁”不動産ファンド

今回の不動産不況の引き金は、米国発サブプライム金融危機だった。それまで国内では、新興不動産会社や国内外の私募ファンド、そして「最後の買い手」とも言われるJ‐REITを主役として、それらが一連の流れ作業のように売買を繰り返し、都心中心の不動産バブルを形成していた。バックには外資を中心とした潤沢な資金供給があった。

ところが、金融危機が深まると、CMBS(商業用不動産ローン担保証券)など証券化市場が投資家離散で崩壊。サブプライムで満身創痍(そうい)の海外金融機関は日本の不動産に対する投融資を一気に絞り込んだ。バブルの主役たちは命綱の資金パイプを失い、市場は逆噴射を始める。「外資・外需に依存した証券化(ファンド)市場の崩壊」。早稲田大学大学院ファイナンス研究科の川口有一郎教授はそう総括する。

不動産不況を深刻化させたのは、金融危機という外部要因だけではない。鑑定価格を無理に引き上げてでもアグレッシブな値付けをし、高値を追う。利益相反を犯して傘下の不動産ファンドに物件を高値で引き取らせる。REIT市場でもたびたび行政指導の対象となった不動産業界の放漫経営、ガバナンス欠如といった内部要因も指摘される。それゆえ“自滅”の要素も大きい。

昨年10月のニューシティ・レジデンス投資法人の民事再生法申請は自滅を象徴するような事件だった。国内初、世界でもまれと言われるREITの破綻だが、「フォワード・コミットメント」と呼ばれる物件の青田買いの資金手当てがつかずに行き詰まった。あまりに異例な突然死だけに、「REITとしての物件の受け皿機能を失ったことで、スポンサー会社が“万歳”(経営放棄)したのでは」との憶測さえ呼んでいる。

最大手ダヴィンチHD 「デフォルト予告」の波紋

さらに、不動産ファンド業界2位のパシフィックHDの破綻が市場の混迷を一段と深めている。同社の公募社債は4本、残高合計370億円あるが、「保有不動産のほとんどが担保に供されているため、社債回収率は非常に厳しい評価となる可能性が高い」(証券アナリスト)。

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