柳井正氏、早大生に「人生のピーク論」を語る 「人は必ず死ぬ、それまでに何ができるか」

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そのうえで、「日本人は概して、変えるということに非常に怯えているか、自信がない。一番の長所であり短所であるのが安定、安全、安心だ。だが、それらは経営にはまったく必要ない。この3つが出てくることは経営に満足しているということだ。成功するには時代を追っかけていてはダメ。変化を自分で作って行かなければならない」と訴えた。

目標設定についても、柳井節は止まらない。「経営者はだれよりも高い目標を持たないとダメだ。低い目標だと絶対成功しない。100メートルを9秒9で走ろうと思う人しか、そのように走ることはできない。100メートルを13秒で走ろうと思っていてはできない。経営者は9秒9で走れる可能性の人を集めて会社を作る。そのための仕組み、方針を作る。そういうビジネスチャンスに資金を投入し、人を育成することだ」と述べた。

一方で、日本企業の経営に対して苦言を呈す場面もあった。「経営者が経営をしていない人が多い。コーディネートや調整はしているが、世の中がどんどん変わる中、会社を変えていかないといけない。きちんとリーダーシップをとり、会社の方向性や方針を打ち出すべきだ。過去と同じ繰り返しではいけない。日本が20年以上停滞したのは、経営者がバックミラーを見て、繰り返しをしていたからだ」と厳しい見方を示した。

経営者が「経営していない」とは?

柳井氏の「熱血講義」は2時間以上に及んだ

途中、若手経営者からは「社員が固定化してくれない」という質問が出た。これに対して、柳井氏は「(中小やベンチャー企業では)多く辞めるのが普通。10人が入ったら8~9人は辞める。ただし、見込みがある人には将来こうなろうとか、夢を語らないといけない」と話していた。

人材に関しては、ファーストリテイリングを例に出し、「われわれの経営幹部で活躍している人はほとんどが一流大学出身ではなく三流大学だ。ただし、人間としての力があり、人をまとめる力がある。その中にはずっと赤字だった英国を立て直し、ヨーロッパ全体の社長になった人もいる。10人に1人もいないが、そういう人を見つけ、その人と一緒に夢を持っていければいい」と持論を述べた。

自身の経営者論についても触れた。「経営者は自由。ある意味では責任を負っているけど自由。何でもできる。たぶんこの世の中で一番楽しくて苦しい仕事は、経営だと思う」と話した。

最後は「これまで、運にも恵まれてきた。悲観的に考えたらきりがない。超楽観的に考えている。でも事前の準備は綿密にやる。できることをやる。将来ビジョンのイメージがあり、協力してくれる人を探す。そうするとほとんどのことはできる。ビジネスは本当に面白い」と締めくくった。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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